ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

リスク回避と経営発展のための新天地を探す 続 農場“分散・移転”のススメ


 
【これ以上、国内で農業を続ける理由が見つからない】

 松川氏が中国進出に前向きな理由はいくつかある。まずは中国のマーケットの可能性を、理屈ではなく実際に体験したからだ。

 「中国で食事した際に『こんなに食べるのか?』と驚くほど食べていて、中国人の胃袋のすごさを思い知らされました。その時、作れば作るだけ報われる最高の国だという思いがよぎりましたね」

 また中国人が日本および日本人に向ける眼差しに“熱”を感じたことも大きいという。日本人と組みたがって、地方政府および中国共産党幹部のみならず、30代で年商1500億円(!)を稼ぐような敏腕のビジネスマンが何人も出向いてくる。こうした若くして富を築いた者が次の事業展開として狙っているのが食品・食料事業であり、そのパートナーとして日本人と強く組みたがるのだという。

 「中国で『日本といえばどんなイメージがあるか?』を聞いたら、『日本イコール安全であり、安心そのものだ』と答えるんです。それほど日本人や日本の企業の品質管理や作る技術が評価されているんだ、と海外に行って実感しましたね。こうした先人が残してくれたせっかくの財産を、宝の持ち腐れにするのはもったいないことです。日本の外に“日本製”を求める人々がいるわけだから、国内で『閉塞感が……』などと言っている場合ではない。この機会に日本の企業や個人が海外にどんどん進出するいいチャンスではないでしょうか」

 再び国内に目を向ければ、東日本大震災の復旧・復興の行方は混沌とし、福島第一原発事故の収束までの道のりはまだ長い。福島県知事が農産物の安全宣言を出したかと思えば、一部地区のコメからは基準値超の放射性セシウムが検出され、マーケットからの信頼を失いつつある。生まれ育った故郷の悲惨な状況を眺めているうち、松川氏は「今頑張っている農業経営者には大変失礼な言い方になるかもしれないけれど、国内でちまちました農業をやっている時ではないと考えるようになった」と語る。

 「日本で農業経営を小規模でやってきたこと自体にも、きっとそれなりの意味があったんだと思います。でもこれからは為替の問題がある、法制の問題もある、高齢化社会問題もある。いろんな要素を考えれば考えるほど、私には日本で農業をやり続けなければならない理由が見つからないんですよ。やる気のある農業経営者は日本に居住地を持って海外に事業所を持つ時代がもう来ていると私は思います。どうするかは経営者の判断力次第でしょう」

関連記事

powered by weblio