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特集

リスク回避と経営発展のための新天地を探す 続 農場“分散・移転”のススメ


 中田氏が農地を探しているという話は栃木県農業振興公社、さらに那須大谷開拓農業協同組合と進んだ。那須町は戦後開拓された地域で、農地総面積は約250ha。かつては酪農が盛んだったが、高齢化と離廃農が進んでおり、現在では農家戸数は10戸前後と、最盛期の20分の1近くになっている。当然ながら、農協の経営自体も非常に厳しい現状にある。

 8月、中田氏は現地を訪れた。組合長と面談した彼は、地域農業および農協の厳しい現実を打ち明けられた。組合長が中心になってトウモロコシの直売などに新しい取り組みを始めてはみたものの、販路があるわけでもなかった。栽培技術のレベルも中田氏の目からすれば、低いといっていいものだった。

 「防除が欠かせないトウモロコシなのに、『虫は食わないから大丈夫』だと思い込んでいたほどですからね。また何とかしてもらえないかと相談されたので、私の取引先に売り込むことにし、選別ものの秀品率は1%未満でした。私自身は地元で多品目の野菜を作ってきていますし、得意分野でもあるので、じゃあ来年からは教えましょうか、となったんです。さらに来年ここで作るトウモロコシの販路も見つけており、販売数量も決まっています」

 中田氏が栽培ノウハウと販路を提供する代わりに、得られたのが畑2.5haだったのだ。ここでは白ネギを栽培する予定だという。

 「農地はいくらでも余っていますし、なんぼでも借りられると言っていただけましたが、土地への思い入れが強い開拓農民の方の地域ですので、まずはこれぐらいの規模から始めるのがいいだろうと思いました」


【農家、農協、そして自分メリットを共有したい】

 借地料は10aで1万円。「高いですよ、自分が郡山で借りているところだと3000円ぐらいのところばかりですから」と話すが、それだけ払っても余りある、魅力ある場所だとか。

 「畑1枚で3~4haありますから、福島の農場とは規模からして違います。土も黒ボクですし、数少ないながら酪農家もいるので、堆肥も無償です。廃業した牛小屋を活用して調整施設も造れますしね」

 ただし、地元である郡山市の農場を手放して、那須町に完全移転するというわけではない。あくまで生産拠点が増えたにすぎない。また震災を契機に、中田氏は自らの農業経営を見直し始めた。

 「これまでは少量多品目の野菜を直売することも経営の柱だったんですが、これからはより契約栽培の方に力を入れていきたいと思います。調整機械も導入しました。1000万円ぐらい投資してしまいましたが。来年からは那須町の農場に週1回程度足を運ぶことになるでしょう。地域の農家、那須大谷開拓農協、そして私自身がそれぞれにメリットが生まれる経営をこの場所にも作っていきたいです」

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