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Opinion

TPP反対派のソースを疑ってみる



 中野氏の誤解を指摘しておこう。ISD条項がNAFTAに含まれていることを引き合いに、TPPに含まれることを問題視している。しかし、ISD条項に相当する協定は、WTOをはじめとする様々な協定の中に含まれている(実質上違いない)。当然だろう、経済互恵関係を築く上で、自由な経済活動が築ける環境を国同士が求め合うのは。また、一方に合理性に欠け不利益になるルールがあれば裁判する権利を認め合い(WTO上の内国民待遇)、その上で法整備が認められる国が適正手続きさえ踏んで法改正に踏み切るのが何か問題があるのだろうか。なお、日本が各国と交わしたEPAの中にも含まれているが、国家主権が侵害されたというケースを聞いたことはない。さらに、日本政府が外国企業に訴えられたケースはない。それを考えれば、法整備が進んでいて、すでに数多くの多国籍企業が進出している日本がISD条項によって米国企業に陵辱される可能性は、本当にあるのだろうか。だとすれば、日本にとっての“仮想敵”外資系企業の名前を教えてほしいものである。

 また、米国の企業がカナダを訴えた件であるが、金子洋一・民主党参院議員によると、こういうことのようである。

 「TPP反対派が、ISD条項が治外法権に他ならないものであることを示すためによく例に挙げているのが、カナダ連邦政府を米国化学企業の現地子会社が訴えた事案です。この子会社はメチルマンガン化合物(MMT)を製造していました。1997年加連邦政府がMMTの流通を禁ずる新法を作ったところ、米企業がそれにより甚大な被害をこうむったとして2億5100万ドルの支払いを求めて加連邦政府を訴えました」

 「この件は、同時並行でカナダ・アルバータ州が、新法が国内通商協定(AIT)に違反するとして専門委員会に提訴し、委員会での検討の結果、新法は国内通商協定に違反すると認定されました。また、MMT自体については流通を完全に禁止する必要のあるような危険な化学物質ではないことも明らかになりました。この専門委員会の判断をカナダ連邦政府は受け入れ、翌年法律を廃止することになりました。それに伴い連邦政府は米社に仲裁費用と遺失利益として和解金1300万ドルを支払いました」

 「これで明らかなように、カナダが連邦制という特殊な政体を採っていることから生じた政府の失策により、禁止すべきでない化学物質の流通を十分な検討もなしに誤って禁止したことが原因であり、ここから化学物質に対して十分な検討をせず規制を課すべきではないという教訓を引き出すなら分かりますが、TPP反対派の主張しているような『カナダ国内で禁止されている有害な化学物質を強制的に輸入させられ、かつ法外な和解金をむしり取られた』という表現はミスリーディングであることはいうまでもありません」

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