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土門「辛」聞

国や主権を超えたTPP交渉 問われるは自由貿易のあり方か


 筆者が、このことを知ったのは、10月19日、ペルーのリマで開催された第9回TPPラウンド交渉をフォローしていて、たまたま見つけた資料からである。その5日前に豪州公正貿易投資ネットワーク(以下、AFTINET)なるNGO(非政府組織)が、同国のクレイグ・エマーソン貿易大臣に次のような書簡を送っていた。

 「TPP交渉参加9カ国は、その交渉過程についての取り決めについて2010年3月4月付け了解覚書で署名したと理解している。その覚書には、機密指定の解除をTPP協定発効から4年間、あるいは協定が発効されなくても交渉終了後4年間は制限を受ける項目が含まれている」

 この呼びかけ文書には、AFTINETに加盟する豪州の労働組合、公衆衛生協会、年金者グループなど25団体が署名している。リマでのTPP交渉は、税関手続きや政府調達、知的財産や公営企業への補助制度などを参加国で共有する枠組みなどについて話し合われた。いずれも豪州国内で関心の強い交渉テーマだが、この協議で合意事項の草案のようなものが作成されるというので、自分たちの権利の侵害を恐れたAFTINETが、その草案の開示を豪州政府に強く求めたのである。

 こうした交渉スタイルは、これが初めてではなかったようだ。04年に締結した米豪FTA交渉でも適用されていたと、AFTINETを舞台に活躍する運動家ハーベイ・パース氏が10月14日付け同組織のプレス・リリースで明らかにしている。

 交渉参加を決断した野田首相は、記者会見で「十分な国民的な議論を経たうえで、結論を得たい」と語った。ところが、TPPの交渉ルールは、徹底した秘密保持が大原則である。この大原則がある限り、国家主権を脅かすようなものであっても、国民には正確な情報など伝えられない仕組みになっていると理解すべきである。野田首相は、これを知った上で発言したのであろうか。もしそうだとしたら、国民に嘘をついたことになる。反対に知らないで発言したのなら、首相失格という烙印を国民が押さなければならない。


多国籍企業に有利な「知財条項」や「ISD条項」

 TPP交渉が、従来の二国間の通商関係という範疇を超えた内容にまで踏み込んでいることは、知的財産権を取り扱う「知財条項」と、投資の紛争解決に関わる手段の「ISD条項」に象徴的に現れている。佐藤議員の質疑を借りて説明しよう。

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