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フーテン人生の無邪気な視点

風景から読み取る農業の歴史

英国生活で週末の楽しみと言えば、郊外の散歩。ロンドンから4~5マイル(6~7km)ほど南に離れると、グリーンベルトと呼ばれた中途半端な緑園域が点在する。さらに10マイル(16km)ほど離れると、放射状に農地が広がって行く。カルスト地形のなだらかな稜線を彩る畑地と牧草地、飛行機雲の交差する空。陸の緑と空の青とのコントラストで、ドーバー海峡の遥か向こうまで飛んで行けそうな錯覚をしてしまうほど心膨らむ英国の心象風景でもある。
 英国生活で週末の楽しみと言えば、郊外の散歩。ロンドンから4~5マイル(6~7km)ほど南に離れると、グリーンベルトと呼ばれた中途半端な緑園域が点在する。さらに10マイル(16km)ほど離れると、放射状に農地が広がって行く。カルスト地形のなだらかな稜線を彩る畑地と牧草地、飛行機雲の交差する空。陸の緑と空の青とのコントラストで、ドーバー海峡の遥か向こうまで飛んで行けそうな錯覚をしてしまうほど心膨らむ英国の心象風景でもある。

 ただし、散歩をするのはそういった農地の端っこ、生け垣沿いや2本の針金を張って家畜が外に出ないために作られたフェンス越しだったりする。郊外の散歩ガイド本やローカルな地図を購入すると、遊歩道パブリック・フット・パス(Public Foot PAth)が点線で明示されていて、大地主は「一般人が端っこを歩くだけなら開放しましょう」ということになっているのだ。

 「この風景の中に『囲い込み』の跡が読み取れるなあ」と日本人が呟くと、「学校でそのように教えてもらえたら歴史も面白かったのにね」と英人が切り返す。

 英国の歴史で2度にわたって行なわれた「囲い込み」のうち、産業革命の際の労働力を作り出すことになったのは第2次囲い込み後のことで、わずか200年ほど前のことだ。その囲い込みが具体的に読み取れる風景がある。小作農の自給を営むスペースと、その自由を大地主が奪い取り、集約式農地を拡大するために、生け垣ですき間なく区画整理した光景は、今なおイングランド中に散逸している。ケント州やサリー州のどこかの丘から小作農家の長屋と大地主の家とを見極めて俯瞰すれば、生け垣の様子で人間を排除した様子がうかがい知れるのである。

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