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特集

農家のための倉庫と事務所

 そのように仕事を巡る環境を整備し直す鍵となるのが、“事務所”の設置である。事務所・仕事場を設けるべき理由、設けることで期待される効用としては、次の3点が挙げられる。

(1)仕事と家庭の生活それぞれに充てる時間を明確にする
(2)仕事を統括する場所を明確にし、情報を一元管理する
(3)自分の仕事を社会と接続する


仕事と家庭の明確な分離が経営者マインドを育てる


 (1)は、まず自らを管理するということである。働く時間と家庭でくつろぐ時間とのそれぞれに固有の空間を割り当て、それぞれの時間を完全に分離する。「ここにいる間は、自分の時間ではなく公の時間だ」と考えて仕事に当たるのである。それは家族に邪魔されずに仕事をするということでもあるし、また逆に、家庭が仕事に侵略されないよう防衛線を張るということでもある。

 もちろん、これまでも圃場に出ている間は比較的明確に仕事の時間を意識できたが、屋内で行なうげ事となるとこれがしばしば曖昧になる。デスクワークは居間でという人も多いだろう。しかしそこは本来団築の場として確保しておくべきではないだろうか。そこには炬燵もあればテレビもあるだろう。そのテレビには子供のファミコンまでつながっているかも知れない。時間によっては、台所からまな板の音もしてくれば味噌汁の香りも漂ってくるだろう(広い家ならそういうことはないかも知れないが)。そういう場所は“仕事”に打ち込むための環境として万全といえるだろうか。

 訓練の賜物として能率こそ下がることがないとしても、そういう環境で行なう仕事は“業務”というよりは“家事”としてしか意識できないだろう。その意識の違いは、経営管理の考え方の違いとしても現われてくるはずだ。

 まず、デスクワークをする場所を居住スペースとは別に確保することを考えてみてはどうだろうか。事情が許せば、家屋とは別に建物を建ててもいい(庭に離れを作るのでもいい)し、そこまでしなくとも、家の中に専用の部屋を確保したり、納屋の一部を囲ってスペースを作ってもいい。少なくとも、ドア一枚(取り外しのできる襖ではないはうがいい)でもいいから、家庭のための空間との間に物理的な遮蔽を設けることである。


圃場内外の情報を集約し仕事の中枢となる場を確保


 (2)は、圃場で使う以外の仕事に関わる一切を1ヵ所に集めるということだ。書類、帳簿、新聞、雑誌、書籍、通信機器パソコンなどを事務所に集中させれば、その1ヵ所ですべての業務が行なえるようになる。日誌や帳簿をつけていて、資材の購入代金を調べたくなって居間へ行き、土壌分析の結果も見ておこうと納屋へ行き、次いで辞書をひくために子供部屋へ行き、さらに新聞を見るために台所へ行ったところで電話が鳴って……といったことでは埓があかない。

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