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【北海道長沼発ヒール・ミヤイの憎まれ口通信】
ムラ社会にイラッとしませんか?
- 西南農場 代表取締役 宮井能雅
- 第43回 2011年11月25日
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「離農奨励金2ha以上の場合は70万円支給!」。前月号の続きである。
報道によると予算規模は66億円で、この70万円は出し手(売り手)に支給される計画のようだ。正直言って今までのご苦労、国民の食の安全、安心を支えてきた生産者に対する退職金なので、もう少し出しても良いのではないかと思うが、限られた予算配分なので、ないよりはマシ。そんなことよりも規模拡大に向けて小さな一歩ではあるが、これから小さな農家がどんどん消えて行く、いや農地が集積されていく歴史的過程を拝見できることは、1流から3流、もしかして大根役者が勢ぞろいした大舞台を花道のそばで見るようなものなのだから、入場料としては安い。次世代に禍根を残すことにはならないし、FTA、TPPをにらんだ世界の動きに対応する政策である。
だが、すべて万々歳ではない。
条件は現実に采配を振ることになる農業委員会の下部組織である利用改善組合を利用することだ。つまりムラ社会の同意を得ることが前提の様だ。この利用改善組合については先月号で説明させていただいたので、今回はその側面について語ろう。
このような利用改善組合を作った当初の意図とは何だったのか? 多分戦後の新地主を誕生させないため、非資本主義の貧農を集める苦肉の策にも思えるが、やはりもっとたちの悪い貧困に輪をかける小作人根性だけの集団だけでは心もとなかったのだろうか。そしてもっと残念なことは、生産者や農協の思惑が右往左往する生産現場ではかなり意識的にローカル・ルールを助長する環境作りに貢献している場面に出くわすのがこの制度の特徴である。
今年私が経験したことを話してみよう。1月に2ha程度の農地が利用改善組合に持ち込まれたらしい。「らしい」と言うのは私には声がかからなかったのだ。言い訳は決まっている。「班で決めた」「米国に行ったから連絡がつかなかった」とでも言うのだろうか。今どき海外に居ても携帯はつながるし、ショートメール、パソコンを持って行ったのでPCメールだって可能であったが、連絡はなかった。まっ、こんなことはローカル・ルールではよくあることなので、目くじら立てて怒ることでもないが、日頃から「地域が…」とか「みんなの利益…」などと極東アジアの理想高きムラ社会にはどのような未来が待ち受けているのだろうか。
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宮井能雅 ミヤイヨシマサ
西南農場
代表取締役
1958年3月、北海道長沼町生まれ。現在、同地で水田110haに麦50ha、大豆60haを作付けする。大学を1カ月で中退後、農業を継ぐ。子供時代から米国の農業に憧れ、後年、オーストラリアや米国での農業体験を通して、その思いをさらに強めていく。機械施設のほとんどは、米国のジョンディア代理店から直接購入。また、遺伝子組み換え大豆の栽培を自ら明かしたことで、反対派の批判の対象になっている。年商約1億円。
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