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しかし、規模拡大以外のコスト削減には限界があります。TPPを機に、規模拡大のための政策誘導を是非実行してもらいたい。それも10年、20年と時間をかけるのではなく、5年なら5年と期限を区切ったメリハリのある政策が重要です。
現場の状況を踏まえた政策として、次の4点を挙げたいと思います。
(1)規模 拡大を可能にする農地法改正
(2)農地を借りる・買うの決断をしやすくするための廃業ルールの明確化
(3)資金調達先の多様化
(4)点在でなく面的集積を促進する法案・仕組みづくり
コメに限らず、日本農業全体に通じるものではないでしょうか。
【六次産業化など戯言を言っている場合でない】
法律を簡素化し、規制を撤廃しない限り、農業を強くすることはできません。いまや農家が役所に提出する書類は山のような量に増えています。JAS法や米トレーサビリティ法、農産物検査法などに対応するための膨大な事務処理が発生しています。数年間の保存義務があり、書類の管理も負担になっています。
しかも、実際の運用では、法律に書いていない書類の提出を求められることもよくあります。国のマニュアルと県のマニュアルが違う、県の担当者が自分の判断で提出書類を増やすことも日常茶飯事です。こうした事務処理コストを我々生産者が負担していることも、収益性が低下した要因の一つだと思います。
ただ、事務処理は大変とはいえ、こうしたコメに関する煩雑なルールが輸入米に対する非関税障壁になる可能性もあるため全面否定できない。TPPは最終的に関税ゼロを目指すからこそ、各国は共通ルールといった形で自国に有利な条件を設けようと知恵を絞るはずです。米トレーサビリティ法をTPPの共通ルールにできれば、コメ輸出には有利に働き、輸入では非関税障壁として機能します。参加交渉に入らない段階の噂話のような情報で右往左往するより、品目別の戦略を定めてルール交渉で自国に有利なポジションを獲得してほしい。それができるのは政治家と官僚だけです。
ところが、農水省に行ってTPP対策について聞くと、いまだに「6次産業化」などと言っている。本気でコメに経営資源を集中して国際市場で戦う準備をしようという時に、「農家の皆さんは卸や小売、加工に進出すればもっと稼げるでしょう!?」ですから、現場を知らなすぎます。米問屋は潰れているし、小売や飲食業、製造業で全く素人の生産者が利益を出すのがどれほど難しいかわからないのでしょうね。
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