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特集

新時代を切り開く TPP後のわが農業


 私の農地は借地も含めて50haですから、ジャガイモを栽培できるのは年間たかだか10haです。まだまだ過剰投資なのは明らかですが、導入後の経営で何が変ったかと言えば、他のジャガイモ農業者の作業を受託して、その作業代で売上を増やすようになりました。金額は多くありませんが、機械は使わなくても償却していくので、農場の財務改善にはプラスに働きます。他人が私の機械を償却するまで手伝ってくれていると考えればいい。自作地と比べ労賃と機械の使用料しか入ってきませんから収益性が低いのは確かです。

 でも、これから何年か経った時には、規模拡大がひとりでに進む可能性があります。おそらく2015年前後でしょう。その時はTPPも発効されていて、市場も国内外に広がるなか、新たな技術体系も労働体系も構築されていくでしょう。今、将来を見据えた投資をし、回収する仕組み作りをしておくことで、自由化に向かう過程の様々な荒波を乗り越える下地ができているはずです。

 現在、加工ジャガイモの受託組合の活動として冬場は、来年の受託面積を取りまとめている時期です。それをみて、誰がどこの作業を請け負うかの割り振りをします。私のシステムと合わせて3セットを使う組合の当面の目標は、年間使用面積100haをコンスタントに実現することです。その体制づくりまでもうひとふん張りという段階ですね。


【官業独占が技術革新のボトルネック】

 ジャガイモ業界の遅れで言うと、品種開発と種イモ増殖の問題があります。野菜や果物は、毎年新しい品種が出てきます。民間も小さい会社から大きい会社まで切磋琢磨しています。なぜジャガイモや麦はそうならないのか、農家としては不思議でなりません。数だけでいえば、北海道で種イモが作られている品種は48種類もあるようですが、認知もなくそれがジャガイモの需要創造につながっているように思えません。民間と比べ、国家管理の育種から増殖体系が問題の根底にあるとしか、理由がみつかりません。

 もう一つ、国家管理の弊害を象徴しているのが、ジャガイモの播種方法です。日本では種イモをその場で切りながら畑に植えていくという非常に手間のかかる方法を採用しています。それに対して、スコットランドでは全粒播種方式です。種苗メーカーから購入した種イモをそのまま植える方法です。選別、カットの工程が省けるだけでなく、病害虫の伝播を防ぎ、芽数が揃って均一な栽培が可能になります。高品質・高収量生産の基礎となる技術体系です。

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