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土門 競争原理を導入することかな。農協と行政が主導するような集落営農はコストばかりがかかり、現にこれが原因で多くの集落営農は破綻状況に陥っている。理想型は、若い担い手に集中させることだ。もう一つは、農地課税を強化して、税制の面から規模集中を図ることだが、今の政治家でこれができるかな。
質問 面積での足切り導入は、零細規模農家を顧客にした農協経営を根底から揺るがしますね。
土門 農協だけではないよ。肥料、農薬、農業機械などを扱う生産資材業者も同じ。多段階流通ということでも農協と同じ問題を抱えている。全農=元売り商社、県本部(経済連)=一次卸、単協=小売商という図式だ。いつまでもこのような多段階流通が維持されると思っていたら、大間違いで、TPP参加が実現する前に、農協も商人系業者も、彼らが維持してきた多段階流通なりエリア制は早晩崩れてくるに違いない。
質問 メーカーの直接販売が増えるのでしょうか。
土門 一部ではメーカー直という流通ルートが増えてくるようだが、農家の与信状況を見れば、やはりワン・クッションは必要だろう。その役割を元売り商社、一次卸、小売商の何処が担うかが、これからの問題だ。この流通改革が進めば、一般的な肥料は2割ぐらい安くできるだろうよ。それに取り組み始めた業者も出てきたというよ。
質問 TPPが生産者に利益をもたらすとはいえないのですね。
土門 賛成、反対を表明するのは自由だが、もし参加した場合の利害得失をよくよく考えておかないと、後で臍をかむことになるぞ。
徹底改革が求められる農業委員会と補助金制度
質問 農業界でもTPP賛成派がいるようですが……。
土門 時代閉塞的な状況を打ち破りたいという気持ちが高じてTPP賛成と言っているように聞こえる。確かに農地も、農協も、コメ行政も、農産物価格も、すべての分野が停滞していて、パッとしない。やはり原因は、農協の既得権益に引きずられていることかな。たとえば、農地取得で許可権限を持っている農業委員会の運営の問題がある。零細兼業農家の集まりである農協事業に影響が出ないように、農協の事業方針に添わなかったり、地域や集落と協調しない生産者などには、農地の取得や賃貸を許可したがらない。農地の価格だけでなく、賃貸価格や農業法人が雇用した場合の人件費まで指標価格を示すが、それは農業振興につながるどころか、やる気のある生産者の意欲を削ぐ結果となっている。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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