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質問 どうすればよいのでしょう。
土門 農業委員会の徹底改革かな。公選制はやめた方がよい。農水省が任命することだ。
質問 地方分権に逆行しますね。
土門 地方分権は、果たしてよいことかな。民主的だと思われがちだが、時にはそれが仇となることがある。悪く言えば、大衆迎合的、あるいは愚民的かな。農業委員の公選制は、地域の農業を振興するために導入したと説明されてきたが、その逆の結果が起きているではないか。農業委員会が農地価格や標準小作料を示さないように法改正しても、現場ではあまり守られていない。農業法人が雇用した場合の賃金の標準額も指示しているらしい。こんなことは絶対にやめさせなければいけない。自己責任という考え方が生まれてこないからだ。役所のような組織が、手取り足取りのお節介行政を続ける限り、まともな生産者は育ってこないのだ。それと補助金も問題があるな。
質問 どこが悪いのですか。
土門 補助金に2つあることを理解してほしい。あえて良質の補助金と悪質の補助金という括りで整理してみよう。前者は、規模要件をきちっと導入した戸別所得補償のようなもので、環境対策も含まれるだろう。後者は、農水省生産局が出すような施設や機械などにつける補助金だ。これは早く全廃した方がよい。いろんなタイプの農業者を見てきたが、結局、自助努力で頑張った農業者ほどしぶとく生き残った。補助金を喰いまくった生産者ほど元気がないし、潰れるような噂をよく耳にする。補助金に興味のある農家は、行政の方ばかり関心があって、概して土作りには不熱心なことかな。土作りの基本的な知識、作物の観察力、肥培管理の基礎技術をマスターできていない。土作りもできていないような農家に補助金を垂れ流すのは、ドブにカネを捨てるようなものだ。
質問 補助金漬け農家の将来は?
土門 金の切れ目は、縁の切れ目ではないが、補助金と融資の道が細ったら、そこでアウトだ。いずれマーケットから消えていくだろうな。
質問 国は助けてくれると期待していますが。
土門 かつてはそうだった。潰れそうになったら、旧農林漁業金融公庫(以下、旧農林公庫)が出てきて、ジャンプ資金が用意されたり、国もワケも分からないような補助金を出したりしていたが、これからはそうはいかないだろう。旧農林公庫は、政策金融の改革で国民金融公庫や中小企業金融公庫などと統合して日本政策金融公庫(以下、政策公庫)になった。昔のような甘い話がなくなったのだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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