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質問 どうしてですか。
土門 政策公庫の主導権を財務省に握られたからだ。それまでの甘い融資姿勢を問われているようだ。最近の政策公庫は確実に返済できる農業者だけに貸し出す方向に切り替えつつあると聞く。農業者に融資する際、取引業者に保証を求めるようなこともやっているらしい。とにかく旧農林公庫に群がっていた農業者の明日は厳しいと言いたい。
質問 潰れることもあり得ますか。
土門 そりゃ、経営に失敗すれば、潰れることも十分にあり得るよ。政策公庫も、融資の返済ができないと、原則、潰す方向へいくだろう。融資対象の施設や機械は、経営力のある農業者に移っていく。そうした物件をいかに安く入手することが利益を出せる経営をする大事な第一歩になるだろうな。
質問 農協も同じでしょうか。
土門 要注意は、農協の全国組織だ。11年度産米の集荷は、例年の6割ぐらいではないか。集荷に敗北した全農は、他人事ながら経営動向を心配している。これが決算にどう影響するか。注目すべきは、この点だ。
質問 JA越前たけふが「脱全農宣言」をしましたね。
土門 これは少々誤解があるようだが、全農をまるで相手にせずと言っているのではないようだよ。全農も取引業者の一つとして位置づけ、肥料や農薬など資材の仕入れも、コメなど農産物の販売も、条件を決めて相手にするというスタンスだ。これが初めてのケースではないと思う。商人系業者との競争が激しい園芸地帯の一部の農協では、同じような取り組みをすでにやっている。JA越前たけふが注目されるのは、コメで、しかも保守的な福井県でこの時期に起きたという事実だ。これはやがて全国の農協に飛び火していくことは、火を見るよりも明らかだ。
質問 全農が打つ手はありますか。
土門 目の前にある事実を正確に認識すること、そして農協界に率先して競争を導入することだ。農協利用運動とか全農結集運動とかのスローガンを叫ぶだけでは何も解決しない。いつまでも運動に依拠した事業を展開していると、足元から崩れてしまうぞ。
質問 国は農協や全農は潰さないと、みんな思っていますが。
土門 「農協は絶対に潰れない」というのは、幻想に等しいよ。農協は潰れても近隣農協との救済合併で事態を収拾することはできるが、全農はそうもいかないだろう。単協が、破綻した全農を引き受けることはしないと思うし、彼らの脆弱な財政基盤からしてもできないと思う。全農も、経営に失敗すれば、民間企業と同様に民事再生法の適用になることを決して忘れてはならない。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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