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農家は弱者で可哀想だという発想はやめるべき
質問 新たな事態に農政はキャッチアップできますか。
土門 農政にもパラダイム・シフト、発想の大転換が必要だ。まず、農家は弱者で可哀想だという発想をやめるべきだ。そういう発想で政策を展開すると、強い農業者は絶対に育ってこない。農政の視線を上にあげ、マーケットの底力を使うべきだ。それには民間の力を引き出すよう政策を打つしかない。とくに生産局が展開している施設や機械などを対象にした補助事業は、農業を弱くするだけで、早い時期に全廃することだ。それに競争政策的にもおかしい。同じ地域にいて、ある農業者には施設や機械などに補助金がついて、他の農業者にはつかないということは、政府が不公正な競争を助長しているようなものではないか。いかにも不合理なのは、補助金の恩恵に預かれなかった農業者がしっかりと稼いで納税の義務をきちんと果たしているのに、湯水のような補助金と低利融資の恩恵を受けながら、利益を上げられず、税金も払えないという不甲斐ない農業者がたくさんいることだ。一度、補助金漬け農業者と納税実態を調べてみることだ。
質問 最後に農産物価格はどうなりますか。
土門 なぜ農産物価格が下がるか。そこをよく考えてみることだ。物の値段は需要と供給で決まる。それはデフレの時代であっても、この原則は変わりない。農家の数が減れば、農産物価格が上昇局面に転じるに違いない。コメは、放っておいても価格が上昇していく。昨年が底値と思っているぐらいだ。これからは農家の数も減っていく。統計などを見ていると、ここ数年のうちに大量に辞めていくことが見える。農家の数が減れば、確実に供給ギャップは解消する。野菜も、きちんと競争をさせれば、優勝劣敗がはっきりしてくる。
質問 残り物に福という状況になりますか。
土門 それを専門用語で「残存者利益」と呼ぶ。ここで歯を食いしばって生き残った者は、その残存者利益を手にすることができるのだ。今年こそ、その残存者利益を手にするため、強靱な足腰を持つ経営を確立していただきたい。
質問 ありがとうございました。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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