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「取引が始まるにあたって、店頭に立ったんです。イオンモール姫路リバーシティーでしたっけね。1日で500kg、売り切りました。もう神様扱いですよ(笑)。ただ、イオンさんと本格的に取引するとなると、ウチだけでは出せる量ではない。それで地域で一緒に取り組めないかと考えるようになりました」
時期をほぼ同じくして服部は仲間作りに奔走する。有田地方環境保全型農業研究会を作って技術を共有するサークルを設立。同時に、イオンの栽培・品質基準を守ることができる周辺の生産者を、名前こそないが「服部果樹園グループ」として緩やかな組織を構築した。現在、前者の組織には40名、後者には5名の生産者がいる。
「服部果樹園グループと言いますけど、あくまで取引先から見た関係でしかないんですわ。つまりは、いろんなことで外に出て行くことが多い私と、地元で生産を頑張っている仲間の、いってみれば農家どうしの業務提携にすぎないんです」
生産者に向けて技術指導を行なう服部だが、一切料金を取っていない。彼が新たな売り先を見つけてきても上前をはねることさえしない。
「技術指導料を頂戴しないのは、私の話に農家のみなさんが耳を傾けてもらうためです。JAの営農指導員や県の改良普及員が無料で教えてくれるわけですから、金がかかるとなると見向きもしません。彼らは教科書通りの技術を伝えているだけだけど、私はそれぞれの土壌条件や日照条件に合わせた指導ができますから、海外の農業コンサルタントのように報酬をもらうのが当然と思っています。でも、話を聞いてもらえないことには先へ進めませんから」
それでも「服部さんのやり方にはついていけんわ」とやめていった生産者も多くいた。できない人がいて当たり前、というスタンスの服部はサラリと受けて流した。
「販売先確保にしても、私が農家から金をもらったとすれば、みんなそれを回収しようと躍起になる、エゴが出てきてしまう。私自身、第二農協になる気持ちなんてさらさらないですし、『そんな端金なんか、いるかい!』ってわけです(笑)」
そんな彼に現在の売上を聞いた。50aあった梅畑は10aに縮小中ということもあり、現在の農業収入は約100万円とか。では、一体何で生計を立てているのか? その答えのヒントは名刺の裏にあった。そこには様々な肩書と資格が明記されていた。和歌山県認定エコファーマー、毒物劇物取扱者、和歌山県農業大学校非常勤講師、日本GAP協会理事、JGAP審査員補。さらには、宅地建物取引主任者、有機JAS食品検査員、ISO9001主任審査員、ISO22000審査員補……。いわば“農業界の資格王”といった感のある服部は、改良普及員資格も持っている。その取得理由は、実に理にかなっている。
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服部一成 ハットリカズナリ
代表
服部果樹園
1970年和歌山県有田市生まれ。94年成城大学経済学部経済学科卒業後、株式会社ナカノコーポレーション(現・株式会社ナカノフドー建設)入社。4年間勤務後、実家に戻り家業の学習塾を手伝う。2000年農業経営を開始。04年有田地方環境保全型農業研究会を発足。08年日本GAP協会理事に就任(現職)、09年からはJGAP2010青果物版作成のため青果物部会技術委員も務める。ほかISO9001主任審査員、日本農林規格(JAS)有機農産物・有機加工食品の検査員等、生産・品質管理にかかわる資格を持つ。経営規模はウメ10a、サンショウ40a(ただし改植中および改植予定分含む)、ほかレモン等。
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