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「資格も何もない私が教える技術なんてものをはなから信用してもらえなかったんですよね、農家さんには。『ほんなら資格、取ったるわ』と思って。効果? テキメン(笑)」
それらに加え、これまでの人脈と経験を生かして農業技術コンサルタントや食品商品開発アドバイザーなど、様々な食い扶持がある。
「私は農外所得で稼いでいるんです、今のところは。そんな私は『農業をやっていないやないか』とよく言われるんですわ。でも、何か問題でもありますか? 農業会計上は農外所得が農業所得を上回っても何ら問題でもないやないですか。それに、農作業と農業はまったく別もんですよね。私がやりたいのは農業経営、事業経営なんです。考えることは農業じゃない、なんて思い込みがおかしいのであって。一般の企業は中・長期の事業計画に基づいて行動していますけども、私もちゃんと布石を打っています」
服部が言う布石とは、サンショウ(山椒)を軸とした事業であった。
生まれ育った地域を世界トップの産地にするために
服部が生まれ育った和歌山県は国産サンショウの8割を産出する一大産地だ。なかでも彼が管理する山林がある有田市清水地区が中心だ。この地で採れるのはブドウサンショウという系統のもので、実が房なりになるのが特徴。香り高く、辛みも中国・韓国産のものよりも際だっている。また歴史を遡ると、霊山で修行する修験者や僧侶が作った腹痛緩和薬「」の原料になった説があるほどから、相当古い。戦後以降は、農家があぜや庭先、山中などに植えてきた。
サンショウによる事業立ち上げ構想が浮かんだのは、2005年。イオンとの取引も順調に進み始めた時期だ。
「清水のサンショウの生産者も今では平均年齢75歳です。限界集落化が進めば、ウチの山も管理しきれなくなる。『それならば自分がやるしかないな』と思ったんです。こんなに面白い作物はないですよ。特に薬効、機能性はまだまだ未解明です。だからこそ本当に面白い」
5月中旬から下旬の1週間にかけて収穫されるサンショウは実ザンショウと呼ばれ、佃煮などの材料となる。一方、7月中旬から収穫される干ザンショウ(熟成が進んだサンショウをこう呼ぶ)は乾燥機にかけられ、粉になり、その多くは香辛料になる。また漢方薬の原料にも使われており、地元のJAありだは国内漢方薬メーカーのトップ、ツムラと取引をしている。
生産者を組織化した地元単協がサンショウ出荷の中心だとすれば、服部の出る幕はないように思われるが、そんなことはない。それはツムラの動きとも関連してくる。というのも、同社は漢方薬の国際化を戦略に掲げており、すでに主力漢方薬「大建中湯」の米国での臨床実験をスタート、2017年には承認され販売される見込みだという。(参考文献『FACTA』2010年11月号)。
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服部一成 ハットリカズナリ
代表
服部果樹園
1970年和歌山県有田市生まれ。94年成城大学経済学部経済学科卒業後、株式会社ナカノコーポレーション(現・株式会社ナカノフドー建設)入社。4年間勤務後、実家に戻り家業の学習塾を手伝う。2000年農業経営を開始。04年有田地方環境保全型農業研究会を発足。08年日本GAP協会理事に就任(現職)、09年からはJGAP2010青果物版作成のため青果物部会技術委員も務める。ほかISO9001主任審査員、日本農林規格(JAS)有機農産物・有機加工食品の検査員等、生産・品質管理にかかわる資格を持つ。経営規模はウメ10a、サンショウ40a(ただし改植中および改植予定分含む)、ほかレモン等。
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