ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

新時代を切り開く 続・TPP後のわが農業

TPP(環太平洋パートナーシップ)参加が決定した中で、農業経営者は今、何を考えているのか。前号に引き続き、生の声をお届けする。また、TPPによって農産物を海外市場に輸出しやすくなるが、その前に今の日本の農産物をめぐる状況はどうなっているかについても論考を加えていく。取材・まとめ/北川祐子、松原司

わが農業(6) 自分の立場をきちんと打ち出して自由化の波におびえるなかれ(株式会社林牧場 代表取締役社長 林 邦雄氏)

【関税撤廃は来るべくして来る】

 TPPに対して、私は賛成でも反対でもありません。ただ、来るべくして来るものであると認識しています。今回TPPを回避したからといって、関税撤廃の波は何度でも押し寄せるでしょう。これは歴史が証明しています。

 現在、養豚農家は全国で約6000戸。農水省はTPP締結でその6割が廃業に追い込まれると試算しています。これを受けて、業界全体はTPPに反対基調です。私は反対運動を否定するつもりはありせん。アクションを起こすことで、有利な政策が出るかもしれない。しかし、政策に頼らなければ存続できないと若い経営者たちが考えるようでは困るのです。

 補助金や政策は経営の助けにはなるかもしれませんが、いつまで当てにできるか分からないものです。なくなることに怯えながら経営を続けるなど、とてもできません。私たちはただ自助努力で自らの経営の足腰を強くするしかないのです。


【品質安定、コスト低減は経営維持の絶対条件】

 まず取り組むべきは品質をそろえることに尽きます。同じ価格で輸入豚肉と並んだときに、国産を手に取ってもらえなくては意味がないのです。枝肉重量、背脂肪厚、しまりをそろえる。それで、バイヤーや消費者から選ばれる条件を1つクリアできます。

 次にコストを下げること。私は生産原価をまず400円/枝肉kgに引き下げるべく努力すべきだと思います。豚価は昨年450円/枝肉kg程度でしたが、生産原価を割るという主張のもと、国は養豚経営安定対策事業で補償基準価格を460円/枝肉kgに設定しています。しかし、今までがそうであったように、豚価下落はこれからも続くと考えるのが妥当です。TPPに関係なく、生産原価を下げなくてはいずれにしろ生き残ることは難しいのです。

 また、日本の豚価はヨーロッパの2倍、米国の3倍と世界的に見れば高水準です。米国は自分の畑でトウモロコシができる上に、海外移民という安い労働力もあります。それでも低豚価で廃業していく経営が後を絶ちません。

 一方、日本はほぼすべてを輸入資材に頼り、狭い国土の中で環境対策を行いながら養豚をやっているわけですから、さらに努力するしかありません。

 今、小売店の店頭で100g100円の輸入豚肉が販売されている一方で、2倍もする価格で国産豚肉が並べて売られている。価格差を差し置いて、国産が支持を得られている証拠でしょう。数年前に豚価が420円/枝肉kgを下回ったとき、輸入豚肉の流通量が大幅に減りました。つまり、今より安価な国産豚肉をつくることができれば、バイヤーも消費者も、安さだけで輸入豚肉を選ぶ必要はなくなるはずです。これは現在53%しかない豚肉自給率を上げることにもつながります。

関連記事

powered by weblio