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特集

新時代を切り開く 続・TPP後のわが農業


 一方で、農業全体で考えればTPPは絶対にチャンスになります。なにしろ日本の食べ物ほど安全で品質が高いものはありません。特に果物は、世界でも高い競争力を持つことになるでしょう。我が山形県が誇るサクランボはその最たる例です。この味は絶対に世界に通用します。近年、国内のサクランボは供給過多で価格の下落が起こって問題になっています。しかし例えば中国で山形のサクランボが受け入れられればどうでしょう。作付面積が現在の倍あっても足りなくなるはずです。恐らく世界の農業国からすれば日本の農家がうらやましくて仕方がないと思いますよ。中国という巨大な消費地がすぐ隣に突然現れたのですから。例えるなら大消費地・東京が突如東北の農村地帯の真ん中に引っ越してきたようなもの。こんな大きな市場をみすみす逃す手はありません。

 かつては島国のデメリットで日本の農作物は良さが知られにくく、また輸出自体もしにくい状況がありました。しかし今や世界では日本食がブーム。日本の農作物の高い品質も世界に知られるようになりました。この追い風を逃してはなりません。現在は円高が続いていますが、円への信頼は実を伴っていないので5年後、遅くとも10年後には1ドル110~120円ぐらいの円安の局面になると私は考えています。それまでに官民挙げて農作物の競争力を強め、世界に輸出していくための取り組みを強化しなくてはいけません。


【TPPは農村再生の絶好の機会】

 TPPを契機に進めるべき施策がもうひとつあります。それは農村の再生です。日本の高度成長を引っ張ってきたのは建設業と製造業でした。しかし現在、建設業は公共工事の削減にあえぎ、製造業は空洞化に苦しんでいる。ですが、農業こそが日本に残された最後の産業ではないでしょうか。若者たちが農村で安定して農業に取り組める、そんな仕組みを作っていかなければいけません。そのためには農業法人をもっと増やすことです。各都道府県当たり平均2000社、売り上げ3000億円ぐらいは目指すべきでしょう。そこが若者の雇用の受け皿となるのです。そういう意味ではTPPで懸念される外国人労働者の流入に対しては私は明確に反対します。

 TPP後を見据えての意味もあるでしょう、国もいくつかの政策を打ち出しています。例えば今後5年間で行われる水田の集約・大規模化、それから45歳以下の新規就労者への助成金。これら自体については大歓迎です。しかし問題点は別にあります。人口減少時代で生産した農産物を国としてどこにどのように売っていくかという戦略が示されていないことです。国から保護されてきたコメなどはともかく、特別な保護を受けずに輸入農作物と渡り合ってきた野菜・果物類は今後十分に輸出産業に成長します。一刻も早くこれらを世界に輸出するための取り組みを進める。それが次代の日本の成長戦略ではないでしょうか。

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