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特集

新時代を切り開く 続・TPP後のわが農業



東日本大震災、原発事故の影響は? 海外への道が開ける前に知っておきたい日本の農産物を取り巻く状況(日本農産物輸出組合常務理事兼事務局長 北川 雅臣氏)

【TPPの先にあるASEAN経済共同体】

 昨年11月12日、日本国政府は正式にTPPについて「交渉参加に向けて関係国と協議に入る」と表明した。だが、TPPのみが着目されている昨今の日本において、決して無視することのできない自由化貿易交渉は、ASEANをハブ(中核)とした地域経済の統合の動きである。周知の事実として、TPPは、2006年にAPEC参加国であるニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4カ国が発効させた、貿易自由化を目指す経済的枠組みであることから、参加9カ国での具体的なルールについては今後、交渉を重ねながら決定することとなっている。

 一方、日本国政府にはTPP参加への焦りが見える。参加表明の条件として、加盟国の間で取引される品目に対して関税を撤廃原則的に100%撤廃しようという枠組みがあることと同時に、ルール策定に積極的に関与することで例外品目を設ける条項を取り入れる姿勢があるからでないかと考えられる。参加予定国のなかで例外品目を設ける声があるのは日本国のみならず、ニュージーランドの乳製品や、米国の畜産業などからはそういった強い声が出始めている。例外品目の設置についてはWTOの協定上、参加国に認められた正当な権利であり、100%の自由化というものは非現実的であるある。

 だが、先述した通り、ASEANをハブとした地域経済の統合は、1993年に発足したASEANの自由貿易協定・AFTAを中心に進められ、ASEAN加盟国のなかで関税撤廃が終わる2015年を目標に「ASEAN経済共同体」の創出が現実的な目標があるのである。その上で、中国の積極的関与は、2002年11月に合意されたASEAN・中国自由貿易地域(ACFTA)の設立を含む「包括的経済協力のための中国・ASEAN枠組み協定」から見ることができる。この協定の特徴としては、「ASEAN経済共同体」が設立される2015年に、「アーリー・ハーベスト」と呼ばれる、主に農林水産品を対象とする関税自由化の前倒しがACFTA内で同時に完了することである。

 経済発展が著しい中国と、貿易自由化のハブとなるASEANをいかにして取り込んでいくのかが重要であり、TPPはあくまでもFTAAPを推進する一つの手法であるという認識は変わらない。

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