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特集

新時代を切り開く 続・TPP後のわが農業


 平成23年3月11日以前については、一次産品の輸出関連情報は植物防疫所が発表している「輸出条件早見表(商業:貨物)」(27頁下段4参照)。と照合し、取引についてはあくまでも相手国事業者との交渉であった。しかしながら、福島第一原発事故以降は、日本から食品等を輸出する際に必要な証明書が義務付けられるようになり、大きな負担となっている。

【輸出時に必要な主な証明書について】

 発行を依頼する証明書は、主に、日付証明書、産地証明書、放射性物質に関する検査証明の以下の3種類に分類されるが、輸出先国からの要求や先方との協議に基づき、このうちどの証明書が必要かについては国によって異なっている。

1.日付証明書
平成23年3月11日より前に、生鮮食品にあっては収穫、加工食品にあっては加工されたものであることを証明
2.産地証明書
輸入規制をクリアするために必要な一定の地域で収穫・加工されたものであることの証明
3.放射性物質に関する検査証明
輸出国側の要求や相手国との協議結果に応じた放射性物質に関する検査の証明

 放射性物質に関する検査については、国内の検査機器台数が限られており、現下の困難な国内情勢から、依然として、国内において検査機器を使用することは難しい状況にあるものの、国の補助事業が補正予算として組まれ、輸出に特化した放射能検査に対する助成が経済産業省「貿易円滑化事業」等のなかで実施され、中小企業の輸出促進を支援する枠組みが整いつつある。また、輸出事業者の自らの努力により、諸外国の検査機器や国内の民間検査機関等に依頼し、検査を行なうことが可能となるケースも出始めて来ている。

 産地証明書については、引き続き、世界各国から要求されているものの、福島第一原発事故後初めて発行する証明書であるため、申請から発行までの期間が都道府県庁によって異なり、書類が全て揃わなければ特に混載貨物などの輸出通関が切れないため、これが一つの輸出者リスクとなっており、発行体制の改善が必要であろう。証明書の発行の遅れはフードチェーンに関連する品質管理のもと素早い検査結果が求められるなか、深刻な問題であると考えられる(27頁下段5参照)。

【さらなる追い打ちは長らく続く円高】

 急速に進む円高も輸出業者を苦しめている。昭和50年代から花きの輸出に取り組んでいる福花園種苗株式会社(愛知県名古屋市)は、ユーロ安とドル安のため、コスト改善等の経営努力をしても事業としての採算が取りづらくなってきており、さらなる改善が必要と考えているようである。吉田豊取締役社長によると「日本が持つ知的所有権は輸出を行なう上で重要であり、また、サボテンや盆栽、球根などの品種開発のレベルは日本が世界で一番高い。そういった市場の評価があり、今現在も、台湾やシンガポールを経由したタイ、ベトナムなどの東南アジア諸国への輸出は行っている」と述べる一方、原発事故については「中国向けの輸出が止まっており、その取引再開にあたっての条件が全く提示されない。現在の市況のなかで、事故前と異なり、一民間企業ができる範囲に限界が出始めて来ている」と、市況の混乱についての対応策を日本全体が共通して抱える課題として対応することを望んでいる。

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