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【編集長インタビュー】
グローバリズムの中で光るのは日本人の持つ多様な価値への適応力
- (株)オフィス2020新社 『2020VALUE CREATOR』主幹(流通ジャーナリスト) 緒方知行
- 第85回 2012年01月27日
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昆 あくまでも大切なのはお客さんで、マーケットの要求が多様であることは先進国の証明です。単一の価値ではなくて、多様な価値を考えるべきなのです。例えば、多収品種のコメなら1俵6000円で作ることも可能です。農業者自身がコストダウンの努力をして安いコメというニーズに対応しているんです。反対に、おいしいコメは1俵10万円のコメがあってもいいんですよ。
緒方 その通りです。
昆 すでに現在の作り方でも日本のコメは負けません。ところが、通常のコメに回すなという制約付きで補助金として8万円も払って、べらぼうに高いエサ(飼料米)を税金で作っているのです。今、TPPのこともあって、農業の世界は、負けることによって保護を求めるという敗北主義が利権化しているのですが。
緒方 それはね、商業も一緒ですよ。弱者でもないくせに、弱者、弱者、って言ってね。
昆 少なくとも農業に関する限りは、先ほど触れたようにコメは十分に競争力がありますし、実態的には、農業・農村にそれほど大きな影響を与えないで、農業改革にとっては望ましい変化が起きているのではないでしょうか。
緒方 全くです。「自分たちが被害者だ」「ダメになる」と口にすることによって起こるのは「タックスイーター」の争いですよ。弱者を気取るほど言いやすいですから。
昆 そう、これはモラルハザードですね。それが政治家と役人を養っているのです。
緒方 だからね、弱者を気取った反対論議にはもう何の意味も持たないのだけど、それが歩いていて、商店街の問題なら、「中小店舗保護」という主張になります。私は目が見えない障害者だけれど、「助けて」なんて言いませんよ。プライドがある。私の場合は全てそこに起因します。
昆 おっしゃる通りです。農業界に誇りがないのが一番の問題です。
緒方 でも、マーケットに支持されなければ、国がやろうと大企業がやろうと国家の保護を受けた者がやろうと関係ないのです。ここを考えれば、もう解決策は見つかるでしょう。
震災後の対応で見直される流通責任と供給責任
昆 農業の場合は農業者ではなく、意欲を持った商業側、工業側の商品開発をする方々が動いてくださるからマーケットに応えられるのです。農産物は、加工されて商品化されるまでは原料ですから。よく「6次産業化」なんて言っているけれど、あんな表現方法は馬鹿げていると思います。
緒方 私も賛成。奇をてらった言葉ですよ。農業はかつて1次産業だった。それが2次産業化して、工業技術を入れて生産性が上がった。今度は何かというと、商業。第3次産業化をすることによって、もっと生産性が上がってくる。つまり、商業化したマーケットインの生産のことですからね。農業の第3次産業化って言えばいいのに、「6次」なんて言うから訳が分からないのですよ。
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緒方知行
(株)オフィス2020新社
『2020VALUE CREATOR』主幹(流通ジャーナリスト)
1939年生まれ。64年(株)商業界に入社し、雑誌『販売革新』の編集長を14年間、そして同社が発行する5誌を統括する取締役編集局長と『商業界』編集長を兼任。82年独立し翌年『2020AIM』(2006年3月、創刊250号を迎えて『2020VALUE CREATOR』に誌名変更)を発刊。現在その主幹。43年に渡り、わが国の流通・商業の専門記者として、また専門誌編集者として一貫してこのスタディに取り組み、取材・執筆活動を続ける数少ない専門ジャーナリスト。また故郷・大分県で「豊の国商人塾」の塾頭(塾長は広瀬大分県知事)を務めており、次世代の商業・流通業人の育成活動にも力を入れている。著作に『鈴木敏文・商売の原点』『同・商売の創造』(講談社)、『セブン‐イレブンからヒット商品が生まれ続ける理由』(かんき出版)など45冊がある。
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