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【フーテン人生の無邪気な視点】
食卓が農産物流通ストリームの最終地点
- マック木下
- 第7回 2012年01月27日
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農産物の流通で農業生産が川上の一番上、つまり源流とすれば、食卓は川下の河口付近に当たる。源流から徐々に下っていく過程そのものが商業であり、河口から海に流れ出ていくように市場へと広がっていく。
末端マーケットを調査・分析し、その過程である原料問屋、加工者、商品問屋、販売者、そして消費者への過程で、それぞれ要求される資金協力や調整を施し、商売の流れを掴んでおけば、末端商品価値は高くも低くもコントロール可能になる。マーケットを支配し課金構造を作り出すのが、商社の利権であり、マーケティング活動のひとつであった。
90年代の半ば、たまたま戻った日本で秋味を堪能しようと八百屋に行くと「長十郎」のないことにショックを受けたことがある。梨もぎの際、農家に聞くと「んなものぁ、もう10年以上作ってねえよぉ。だいぶ前から二十世紀ばかりだ」という答えだった。このことは商品生命とマーケットとの関係を考えるきっかけになった。
長十郎はなぜ飽きられてしまったのか。調べてみたら、果物はどんどん糖度の高い方向に向かって収穫が増加しているため、ということであった。確かに長十郎にはちょっとした酸味がある。個人的にはあの酸味が懐かしいのだが、世の中はいつの間にか長十郎の商品生命を終わらせてしまっていた。長十郎が欲しければ、特定の農家に頼んで作ってもらうしかない。
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マック木下
ゼネコン、商社、航空旅行業、世界的弱電企業などの国際畑で育ち過ぎた50代。1980年代から主に英国に住み、英人が本名をちゃんと発音できなかったので、いつしかマックに。ジャンルには無節操なライターで、執筆歴は10年間ほど。専門は日英関係史とロンドンの歴史散歩。寄稿先は『英国特集』『R.S.V.P.』『Quality Britain』『Taste of Britain』『未来教室』『ぼんじゅーるレマン』のほかミニコミや会員誌など。
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