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【“被曝農業時代”を生きぬく】
福島米で規制値超え 放射性セシウム汚染の要因と対策をどう考える?
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第7回 2012年03月06日
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福島県産のコメから国の暫定規制値(1kg当たり500Bq)を超える放射性セシウムが相次ぎ検出されてきた。この問題の原因は何か。そして対策はあるのか。農林水産省と福島県は緊急原因調査を行なった。この中間報告をもとに、前回に引き続きサイエンスライター・佐藤成美氏にコメの放射能汚染の要因分析をまとめてもらった。
調査結果の中間報告が公表される
福島第一原発事故によるコメの放射能汚染問題は深刻さが増すばかりだ。2012年1月13日に、福島県川俣町では、町独自の調査で暫定規制値を超えるモチ米がみつかった。玄米から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された地域は、福島市、伊達市、二本松市に加え、川俣町の4市町となった。国の暫定規制値は1kg当たり500Bqだが、福島市渡利地区では1540Bqが検出されるなど高い値を示した地域もあった(表1)。昨年4月に政府は、土壌から吸収される放射性セシウムの量を最大10%と想定し、土壌1kg当たり5000Bq以下の水田で作付けを認めた。しかし、相次ぐコメの放射性セシウムの規制値越えのニュースに関係者も戸惑うばかりだ。
農林水産省と福島県は、まず二本松市旧小浜町、さらに福島市旧小国村、渡利地区などコメが暫定規制値を超えた水田やその周辺の水田の調査を行なった。その中間報告によれば、コメの暫定規制値超えは、同じ地区の中でも特定の区域の水田で局所的に発生していた。 また、山間部の山林に囲まれた狭い水田(谷地田)が多いものの、基盤整備された比較的平坦な水田でも規制値超えが見られたという。さらに、このような規制値超えのコメが生産された水田では、背後に山林があり落ち葉などの層を経由して灌漑水が直接流入する立地条件が見られたこと、土壌中のカリウムが不足していたこと、あるいは根張りが浅かったことなどが指摘されていた。日本土壌肥料学会も「このような要件は、学会のホームページ上で予想し、懸念していたことに符号する」という。農林水産省では、「今回の規制値越えは、多くの要因が重なったものであり、空間放射線量や山林からの水の流入は現段階では直接的に影響しているとはいえない」というものの、付近の山林の水との関与はありそうだ。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
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