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たしかに戸別所得補償の予算はモデル制度年度から使い残されてきた。2010年度の戸別所得補償の予算は598億円が残り、一般会計の純剰余金の一部となった。一般会計の場合は、財政法により、純剰余金は1/2以上が国債償還に充てるよう定められている。2010年度の純剰余金は特例法として、東日本大震災の復旧、復興対策を盛り込んだ2011年度第2次補正予算の財源に充てられた。
しかし、米価が下落傾向にあった2010年度、2011年度の使い残しは、戸別所得補償制度への加入率が70%前後であることに起因する米の所得補償の定額部分での剰余と考えられる。2012年度予算要求の段階では、定額部分だけでなく変動部分でも多額の使い残しが発生することが予想され、これが減額につながったのだろう。使い残しが発生することは悪いことではない。使い残しが適切に処理されていればよいのである。
この変額部分(米価変動補てん交付金)は2012年度から食料安定供給特別会計に組み込まれることになった。特別会計を選択することには賛否両論ある。
特別会計のメリットとしては、価格変動の保険で剰余金を積立金的に活用できることだ。実際、一般会計に組み入れてしまうと予算額が増大するとともに、毎年度多額の不用額が発生する(という議論もあるが、一般会計のほうが剰余金の扱いが明確であるため、この議論は当たらないと思う)。一方、特別会計のデメリットもある。特別会計の場合、従来の一般会計のように剰余金を返還する明確な仕組みがなく、その処理が不透明になることだ。
今回の話を調べていくと、戸別所得補償制度の特別会計への編入や2012年度予算の縮小に問題があるとは言えない。ただ、4次補正の「農業体質強化基盤整備促進事業」には疑問が残る。そもそも、震災復興関連でもないこの801億円の事業を、この時期に慌ただしく4次補正で上げる必要があったのだろうか? これは4次補正の農業振興策1,574億円の過半を占めている。3月末までに執行できないような多額の予算は2012年度予算としてじっくり検討すればよいのだ。必要な設備の更新に有効に使われるのだろうか? その結果、農業経営の強化につながるのだろうか? 4次補正については、予算が使われた後の検証をきっちり行なう必要があるだろう。
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松田恭子 マツダキョウコ
(株)結アソシエイト
代表取締役
日本能率協会総合研究所で公共系地域計画コンサルタントとして10年間勤務後、東京農業大学国際食糧情報学科助手を経て農業コンサルタントとして独立。実需者と生産者の連携の仕組みづくりや産地ブランド戦略を支援している。日本政策金融公庫農業経営上級アドバイザー試験合格者。(株)結アソシエイト代表取締役。
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