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【海外レポート】
オランダを合わせ鏡として日本の農業を見る 後編
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第3回 2012年03月29日
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オランダに学び、“ガラパゴス化”日本を活かせ
「農学栄えて農業滅ぶ」という言葉がある。それどころか「農業問題」と言われるものの本質とは「農業関係者問題」だと筆者は思っている。農業関係者の居場所作りのために農業問題が創作され続け、その対策と称する農村政策が日本農業のイノベーションを妨げてきたのである。その思いは、今回のオランダ旅行を通してより強く感じた。
先にも書いたが、オランダでは1970年代の中頃に普及機関の民営化が始まり、現在、農業への技術指導は民間のコンサルタントによって担われている。その結果が現在のオランダ農業の強さ、健康さを実現させたのである。
当初は技術指導が民間事業として有料になることへの反発もあったらしい。しかし、有料の民間事業であればこそ指導を受ける事業者(農家)はその経済的有用性を問う。経営効果を上げる指導のできないコンサルタントは淘汰されていくのである。先端的な技術や経営ノウハウを我が物にする努力のない農業経営者も同じだ。コンサルタント間の競争がオランダ農業を成長させたのだ。技術レベルの高い小規模農家がコンサルタントに転業するケースもあるそうだ。
産官学で農業の産業化
我が国には約70の農学系学部を持つ大学があり、国の研究機関だけでなく各都道府県の農業試験場や多くの改良普及員が存在する。そして、日本農業はこの体たらくなのだ。これに対して、農業先進国オランダには農業の専門大学はワーヘニンゲン大学一校だけ。そして、同大学の機能は高度な学術研究と教育だけでなく、ワーヘニンゲン大学リサーチセンター(Wageningen University and Research Center、略称=Wageningen UR)という機関が産業としての農業を発展させる情報センターの役割を果たしている。さらにワーヘニンゲンURを中心にワーヘニンゲン市周辺に外国企業を含めた多数の農業・食品関連企業の研究施設が集積している。それはまさにマーケット起点の農業・食品・流通分野の産業コンソーシアムであり、世界の食品研究の中心地である「フードバレー」(食品研究・産業集積地域)を形作っている。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
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