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海外レポート

オランダを合わせ鏡として日本の農業を見る 後編

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第3回 2012年03月29日

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農産物の流通改革もそうだ。

野菜も花卉類もオランダには国が管理する卸売市場というものはない。Halco社は主にオランダの青果物を中心にEUはもとより世界中の需要者に提供している。また、需要家の要求や海外生産の状況や過去のデータを元に生産者に情報提供され生産や出荷調整に生かされる。

市場法に基づく卸売市場でのマーケット形成ではなく、あくまで需要者起点の青果物供給と生産を安定化させる機能を果たしている。

一方、日本でも有名な花市場アールスメア。これは、オランダ生花中央市場フローラ・ホランドが運営するもので、広さ150haという世界最大の花市場である。同国内には7つの生花卸売市場があるがアールスメアは最大規模のもので、我が国の花関係者にもそのコンピュータを使ったセリの様子は有名である。

全世界で流通する切花や鉢物の50%、球根の60%がオランダから出荷されると言われているが、それだけに、アールスメア市場には世界中から花のバイヤーが常駐している。

アールスメアは、オランダの花生産者の協同組合から始まっている。そして彼らの市場形成によってマーケットニーズを把握しつつ世界のマーケットを支配する存在になったのだ。そこから陸路でEU諸国に向かうだけでなくスキポール空港から空路で世界各国に輸出される。


農業後進国日本の可能性

ここまでオランダを合わせ鏡にして日本農業の悔しいけどの後進性を書き連ねてきた。しかし、それは我々日本の農業経営者そして農業界には劣っている分だけの産業としての成長の余地が残されているということでもあるのだ。産業的あるいは経営的には残念ながら負けてはいても、我が国独特の食文化に根ざした農産物生産があり、他のどこにもない優れた生産物も存在する。さらに、世界に寿司などの和食文化が広がっていると言われるが、和食店舗を経営しているのは、中国人、韓国人、ベトナム人を中心とした小規模事業者がほとんどだ。もし、農業界だけでなく日本の外食産業や小売業も含めた協力体制の中で海外での店舗展開による市場開発や海外生産を含む輸出に真剣に取り組むことがあれば、その可能性は極めて大きいものだと思われる。そのコンソーシアムを実現するためにも我が農業界の改革が必要なのだ。むしろ、“ガラパゴス化”と言われるような現在の日本農業の姿は、農業の自己改革と共にまだ本物が伝えられていない。和食や日本の食材を世界の顧客の満足に応えられるように提案していけば、日本農業と食関連産業にはオランダにも勝る可能性が秘められているとすら言えるのである。アムステルダムの街中にある小さな八百屋には多くの客が集まっていた。合理的で大規模な生産と流通があればこそ、小さな八百屋に顧客が集まるのである。日本農業の欧米での可能性とはそういうものなのかもしれない。

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