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“被曝農業時代”を生きぬく

コメの放射性セシウム暫定規制値超えの新説登場!「落ち葉や雑草を介した」有機物媒介説を検証する

福島県産の米から、国の暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された問題で、その原因究明が行われている。2月18日に、東京大学の研究者による「第2回放射能の農畜産水産物などへの影響についての研究報告会」が行われた。そこでは、農学生命科学研究科の塩沢昌教授が、放射性セシウムのイネへの移行は有機物が介しているのではないかという見解を新たに報告した。サイエンス・ライターの佐藤成美氏が、塩沢教授にその詳細や今後の対策について取材した。

 福島県産の米から、国の暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された問題で、その原因究明が行われている。2月18日に、東京大学の研究者による「第2回放射能の農畜産水産物などへの影響についての研究報告会」が行われた。そこでは、農学生命科学研究科の塩沢昌教授が、放射性セシウムのイネへの移行は有機物が介しているのではないかという見解を新たに報告した。サイエンス・ライターの佐藤成美氏が、塩沢教授にその詳細や今後の対策について取材した。


用水ではなく有機物?

 昨年12月に発表された農林水産省と福島県の中間報告によれば、コメの暫定規制値超えは、同じ地区の中でも特定の区域の水田で局所的に発生しており、山間部の山林に囲まれた狭い水田(谷地田)が多かった。背後に山林があり、落ち葉などの層を経由して、灌漑水が直接流入する立地条件が見られたことなどから、谷地田では降雨時に山から流れ込む湧き水や、用水から高濃度セシウムが流入したという説がコメの規制値越えの原因として有力視されていた。ところが、東京大学大学院農学生命科学研究科の塩沢昌教授は「規制値越えの原因は、用水ではなく水田にあった落ち葉や雑草などの有機物が媒介した」という有機物仮説を発表した。

 原発から降ってきた大気中の放射性セシウムは水田の表面を覆っていた落ち葉や雑草など有機物に付着した。浸透量の少ない、すなわち水はけの悪い水田では、水の動きが少ないため有機物がいつまでも水田の表面にとどまっていた。やがて、夏場の高温の時期になると、有機物の分解が進み、そのときに湛水だった水田では放射性セシウムが水に溶けた状態になる。そのため、有機物由来の放射性セシウムがイネの根から吸収されたのではないかという(図1)。放射性セシウムはイネの穂にのみ検出された。穂の出る時期が夏であることから、放射性セシウムの移行時期は夏と考えられている。「この説なら、放射性セシウムの移行時期も一致するし、山からの水が流入しない平坦地の水田で規制値越えが起こった原因も説明できます」と塩沢教授は語る。


放射性セシウムは次第に吸収されにくくなる

 塩沢教授らは、土壌中の放射性セシウムの挙動を調査してきた。放射性セシウムは、事故直後は水に溶けた状態だったが、やがて土粒子の電荷によりカルシウムイオンやカリウムイオンなどともに土壌に弱くひきつけられる。さらに、時間がたつと、粘土鉱物に強く固定される。固定された放射性セシウムは、移動できないので植物から吸収されることはない。これは、セシウムの固有の性質である(図2)。

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