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“被曝農業時代”を生きぬく

コメの放射性セシウム暫定規制値超えの新説登場!「落ち葉や雑草を介した」有機物媒介説を検証する



 調査結果によれば、事故直後の2、3カ月の間の放射性セシウムは、水の動きの10分の一~20分の一の早い速度で土壌中を移動し、植物に吸収されやすい状態であった。6月以降は、移動速度が水の動きの200分の一と急速に低下し、植物に吸収されにくい状態に変わった。このように、放射性セシウムは次第に植物に吸収されにくい形になるため、今生えている雑草には放射性セシウムは含まれていない。「それにもかかわらず、なぜ夏まで植物に吸収されやすい水溶性の形のままで放射性セシウムは存在できたのか、解明しなければと思ったのです」と塩沢教授は話す。


二枚目の水田だけ高い値

 福島県二本松市の水田は、三方を山に囲まれ、北斜面の棚田だ。一番山側の1枚目の水田から、2枚目、3枚目と5枚の水田が段となってつくられ、1枚目の水田から水をひき、順次全部の水田に流れている。この水田で収穫したイネは、2枚目の水田のみ、1キログラム当たり500ベクレルとなった。「もし、用水が原因ならほかの水田もすべて規制値越えとなるはず」である。しかも、土壌中の水分や引いている湧水の放射線の線量は低かった。土壌中の放射性セシウムの鉛直分布を調べたところ、表層0~2センチメートルの部分の放射性セシウムの濃度が高く、放射性セシウムが土と十分に混ざっていないことがわかった。さらに、冬の間の水田の様子を見ると、2枚目の水田には水がたまったままだったが、ほかの水田は水がわずかにたまっているか、全くたまっていない状態だった。2枚目の水田は水はけが悪いことも判明し、同じ場所にありながら、個々の水田の性質は異なっていた。


森林の生態系での放射性セシウム

 「二本松の水田の例はかなり特殊」としながら、放射性セシウムのイネへの移行割合が大きい水田の調査を続けた。津波を受けた水田や粘土質の水田などさまざまな性質の水田の調査を続けた結果、共通の特徴が浮かび上がってきた。それは、どの水田も、放射性セシウムが降下した時に水田の表面が落ち葉や雑草などの有機物に覆われていたこと、浸透量が小さいこと、そして耕起や代かきが行われていたにも関わらず土壌表面の放射性セシウムの濃度が高いということだ。

 有機物は軽いため、代かきをしても水田の表面に浮いてしまい水田の内部に混ざらなかった。浸透量の小さい水田では、水はけが悪いのでいつまでも同じ水がたまっている。そのため、放射性セシウムの付着した有機物がいつまでもその場で浮いていて、温度の上昇とともに有機物が分解した。「浸透量の少ない水田では、水があまり動かないので酸素の量が少ないと考えられます。そのために有機物の分解の速度が遅く、夏まで水中にとどまってしまったのでしょう」と塩沢教授は話す。

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