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【“被曝農業時代”を生きぬく】
コメの放射性セシウム暫定規制値超えの新説登場!「落ち葉や雑草を介した」有機物媒介説を検証する
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第8回 2012年03月29日
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ただし、浸透量の少ない水田でも、秋おこしをした水田では放射性セシウムの移行が少ない傾向があるという。放射性セシウムが降下した時、水田の表面に雑草がなかったため、放射性セシウムを付着した有機物が少なくなり、移行も少なくなったと塩沢教授は考えている。
用水が要因ではない
塩沢教授らは、水田の土壌の浸透量が放射性セシウムの吸収を左右し、イネの規制値越えの要因となっていると考える。土壌が水を浸透させる能力を浸透力や浸透性といい、これは土壌の粒子の大きさ、化学組成、さらには粒子同士の隙間の大きさや分布などで決まる。1日あたりの浸透量は平均10ミリ程度だが、水田によっては0~40ミリ程度と多様で、水田に外部から入ってくる用水量は、浸透量とほぼ等しい。浸透量が多い水田ほど、入り込む用水の量が多くなり、外部から物質がたくさん流れ込むことになる。用水が放射性セシウムの流入の要因ならば、浸透量の多い水田ほど外から放射性セシウムの流入が多くなり、イネへの放射性セシウムの移行は多くなるはずである。ところが、浸透量の多い水田ではコメへの放射性セシウムの高い吸収は生じていなかったという。
「放射性セシウムが規制値を超えた水田では浸透量が小さいばかりでなく、用水を引きこんでいないところもありました。ですから、用水がセシウムの吸収の大きな原因とは考えにくいのです」
土壌中のカリウムの量が少ないと放射性セシウムの吸収が増加することが知られている。用水中にカリウムが含まれていて、平均的な用水量ならばイネには十分な量のカリウムが供給される。一方、浸透量が少なければ用水から供給されるカリウムの量も少なくなり、放射性セシウムが吸収されやすくなる。土壌のカリウムの影響は、浸透量の影響も重ね合わさっているのではないかと塩沢教授は推測する(図3)。
土自体が吸着材
次の作付けにむけて、イネへのセシウム移行を防ぐためには、塩沢教授は次のようにアドバイスする。
「すでに、耕起した水田では、田植え前に田んぼの表面をよく乾かし、土壌をよく混ぜてください。よく混ぜることによって、放射性セシウムが付着した有機物の分解をより促し、放射性セシウムの粘土への固定を進ませることができます」
まだ耕起していない水田で、津波をかぶって、放射性セシウムを付着した有機物が表面に残っている場合は、それを取り除くとよいという。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
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