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“被曝農業時代”を生きぬく

コメの放射性セシウム暫定規制値超えの新説登場!「落ち葉や雑草を介した」有機物媒介説を検証する


 今、除染で一番効果があるとされているのは、土を削りとること。そうすれば、作物への放射性物質の移行や地域の線量を下げることにはなる。しかし、削り取った土を運ぶのにコストがかかるし、処理をどうするかという問題がある。

 「土には放射線を遮蔽する効果がありますので、けずりとった土は埋めるといいです。水田ならイネが根を張るのはせいぜい15センチまでなので、地表から30センチぐらい下に埋めてしまいます。下の層にいい土があるならば、反転させるのもいいと思います」

 「土自体が放射性セシウムの一番の吸着材なのです」と塩沢教授は続けた。植物は土が固定した放射性セシウムを吸収できないので、作物への移行は少ない。土の中では、放射性セシウムは土に吸着されて動きにくい形でいることを考慮した上で、対策や除去法を検討すべきということだ。


東大が政府の作付制限を批判

 さて、今年の作付けはどうなるのか。「雑草や落ち葉は、分解が進み腐植として、土壌に含まれています。この有機物の分解がさらに進み、粘土に固定されるので、来年のコメへの移行は大きく減ると考えています。しかし、枝や稲わらの分解は遅いので、水田によっては放射性セシウムが残るかもしれません」と塩沢教授は予測する。

 農林水産省は1キログラムあたり100ベクレルを超える放射性物質が検出された地域を対象に、今年の作付けを制限するかどうかを検討していた。東京大学農学部は、「今年、作付けをしないのは弊害が大きい」として作付け制限を反対し、試験栽培を推奨すべきだとする提言を発表した。塩沢教授も「今回の調査の結果でわかったように、同じ場所の水田でも規制値をこえるかどうかのばらつきが非常に大きいのです。ですから、100ベクレルを超すイネが生産されたからといって、その地域全部で作付けを制限する必要はないでしょう」と話す。もし100ベクレルを目安にして作付け制限を行うと、対象は最大で12市町村の65の地域に及ぶとみられる。東大の提言では、水田の荒廃や農家の意欲の低下につながるとして、「農業復興を断念させるものだ」と作付け制限を批判した。「放射性セシウムが出てしまったからといって、作物をつくらなければいいという問題ではありません。農家はコメを作付けし、収穫したコメの全部の袋を検査すればいいのです。もしも規制値をこえたものが出たとしても、出荷しなければ問題はないですから」と塩沢教授。

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