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【耕すということ】
耕起と鎮圧なぜ鎮圧が必要なのか
- 農学博士 村井信仁
- 第13回 1995年10月01日
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作物に合わせた砕土・整地
理屈を考えてみよう。馬鈴薯やてん菜は、比較的乾燥した土壌条件を好む作物である。深耕すれば、排水性が良好になり、好適な環境を提供することになる。ロータリハローで十分に砕土するのは、馬鈴薯は塊茎が杢旦に生育することに加え、収穫時に土塊が少なく、収穫作業が円滑に行なわれることに結び付く。てん菜は移植栽培であり、移植精度を高め、活着を良好にしようとすれば、ロータリハローは欠かせない。エネルギーを消耗しても、そうしなければならない事情があってのことである。
深く砕土すれば、過膨軟になって、初期生育のための十分な水分を得られないのではないかという危惧があろう。しかしそれは大丈夫である。プランクや移植機に工夫し、植え付けの時に、それぞれローラで鎮圧するようになっている。鎮圧によって種子、あるいは苗を土壌に密着させ、必要な水分を確保する。
小麦や豆類は、馬鈴薯やてん菜ほど深耕する必要はない。輪作形態の中では、硬盤示透水層)が形成されている訳ではないので、20cmも耕起されれば十分である。浅起こしだから、連数の多いプラウで耕起すれば能率的であり、消費エネルギーも少ない。
砕上は、ディスクハローで祖掛けしてから、ケージローラ付きロータリハローで軽く砕土・整地するのが正しい。ディスクハローは下層を鎮圧することに効果的であり、ロータリハローのケージローラは、中層を鎮圧する。
あまり深く耕起されず、適度に硬い層が下に残っていることは、十分な水の供給を約束するものである。下層と中層が鎮圧されていることは、直接的に播種床の水分を確保するものであり、小麦や豆類などの発芽―初期生育を良好にする。直播するものにはこうした手当を怠ってはならない。もちろん、播種時に鎮圧を加えることはいうまでもない。
全体を鎮圧し、さらに播種にも鎮圧することが、なぜ、発芽・初期生育を良好にするのか、その鎮圧の度合いはどの程度にすべきか疑問が湧いてこよう。端的にこう考えればよい。その昔、手で播種をしていた時代には、鍬で耕し、整地するのが普通であった。その軟らかい場所に直接種子を播くことはなかった。膨軟なところに播種をしても発芽がよくないことを知っていたからである。足で踏んだところに種子を播くのか、種を播いて足で踏んで、覆したかのどちらかである。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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