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新・農業経営者ルポ

男はオランダと出会い農業のあり方を学んだ


 「営業では新参者の悲哀をたっぷり味わいましたが、心の支えになったのは商品の良さをわかってくれる顧客との出会いです。らでぃっしゅぼーやや生協、生活クラブとは長い付き合いです」

 現在の主要顧客は量販店、外食、レストラン、宅配などの直接顧客が大半を占める。ホテルとの直接取引は「年間売上に匹敵するチケットやパーティー券の購入を半強制された」ことから控えているという。長谷川はこれまでの経験則から量販店のバイヤーと会えない商社流通も「外されやすい」と感じている。量販店を減らして外食を増やすのが当面の目標だ。


オランダに学んだ父子鷹 設備投資の決断は

 長谷川はオランダ農業との出会いによって“目覚め”た農業経営者である。農業ビジネスに対する考え方は農業村の発想とは別次元にある。

 知人のホウレンソウ農家から長谷川の顧客に商品を売って欲しいと頼まれたことがあったという。売る側が特長を示し、いつまでにいくらで売るかを決めるのは常識だ。しかしビジネス経験がない農家は何をどう決めてよいかすら分からない。彼らにきつく当たりがちなのは、かつての自分を思い出すからかもしれない。

 「ストライプのパンツに開襟シャツ、ブルゾン姿で大手プラント会社へ商談に赴き、営業部長から『そんな格好でここに来た人は初めて』と注意されました。人生初のスーツを買ったのはその直後です」

 相手に合わせるのもビジネスの基本だ。農業先進国オランダでは英語は当たり前、加えてドイツ、フランスなど売り先の言葉も覚える。

 28歳になる長男の明洋が事務所に現れた。3年のオランダ農業留学から帰国し、栽培現場で働くようになって約3年が経つ。父が10年かけてできない栽培技術を1年半でマスターし、海外の施設から誘いを受けたほどだ。留学中にフランクがマッシュルームの有望市場として目をつけ農場を購入したキューバ、有機が盛んなスイスを訪れ、世界的な視野で農業ビジネスを捉えている。

 明洋は長谷川が悩んだムラや農業界に対するしがらみも軋轢も感じてはいない新世代の後継者だ。

 2004年に長谷川は借入金のリスケジュールを行っている。バブル時代だからこそできた借金。しかし、思惑の外れた取引相手の倒産や販路拡大に伴う苦労。長谷川のマッシュルーム経営は順風満帆だったとは言えない。それでも長谷川は、最初の一年間、年間約2000万円もの金をオランダの技術コンサルに対して払ったことを無駄だったとは思わない。フランクと出会い、彼をその後10年間も顧問として雇い続けた。

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