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ところが、ロータリをかけない作業体系を構築しても、ジレンマがあるそうだ。国産の播種機や移植機はロータリをかけることが前提で、粗耕起をした圃場ではうまく動かない。砕土は作物の成長のためだけでなく、播種機や移植機を動かすためにも必要条件になってしまっている。
輸入機の導入も解決策ではあるが、ヨーロッパでは直播が多く、苗を準備して移植する体系が主流の北海道には必ずしもマッチしない。特にタマネギやビートなどの移植機はロータリをかけないと、精度の高い作業ができないというのが嘆きだ。
経済的な物差しに加えて、もう一つ環境に対する考え方も日本は遅れていると話す。同氏が耕作する美瑛町は傾斜地が多い地域で、昨年のように鉄砲水が発生すれば、泥が道路に出て畑の土壌は流乏してしまう。特に表層の微生物が多く生息する土壌がなくなるのだから、次第に土地が硬くなり、痩せてくることは目に見えている。アマゾン川流域で木を切ると土が流れ出す現象と同じことが日本でも起きていると示唆する。
日本では傾斜が強いと農作業が大変になるからという理由で補助金が増えるが、ドイツであれば傾斜を少なくするためか、経営をやめるために補助金が投じられるという。環境という視点で法律が整備され、コントロールされているのだ。どちらが持続可能な農業政策なのかと50年、100年先を案じている。
経営する10haのうち作付するのは2haで、残りは緑肥を播いて4年ずつ休ませる。長年使われてやせてきた土地は、休ませて土の力が戻るのを待つ。このやり方が経済的にも環境が持続するためにも意味を持つからである。
第3章 作業体系を見直して経営にゆとりをつくる
爪もの作業機をどうやって使ったらいいのか――。読者からは、作業体系の組み立て方に思案しているという実情が聞こえてきた。
■作業機は風土の中で作られる
ヨーロッパの畑作向けに開発されたスタブルカルチを日本の土壌、作物、気象条件で使っていくためには日本流のアレンジが必要だ。
例えば、プラウは元来、乾燥地で反転性能に優れ、保湿効果をもたらす作業機である。一方、ぬかるみの中で雑草処理を行なうアジアの稲作には犂が発達した。だが、その後のトラクタの普及により、畑作用の普及に加えて、日本独自の水田用プラウが使われている。
作物や土壌が違ったり、除草剤が出現したり、農業のやり方が違えば、耕起手段はその中で変わっていく。作業機の種類、性能だけでなく、使い方も次々と進化するはずである。
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