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現在、SBS 輸入は中国米が半数以上と最も高いシェアを占めている。95~97 年はアメリカのシェアが最も高かったが、98 年以降、中国産米がアメリカ産米を追い越して1位となり、アメリカ産米は15~20%のシェアに低下した。中国から輸入されたSBS米のほとんどすべてが東北地方で育種されたジャポニカ米であり、従来日本米とのブレンドを前提として使用されていたのに対し、アメリカ産米はあくまで品質で勝負し、ブレンドをせず100%単品で販促を推進してきた(実際、USAライス連合会は中粒種のジャポニカ米「カルローズ」を外食産業に向けてここ数年、息の長い販促活動を行なっており、3月8日の「FOODEX JAPAN 2012」では小売向けも見据えた試食サンプリングを実施している)。
今回の吉林省産米の小売店での販売は、ブレンド用と考えられてきた中国米がとうとう単品勝負での感触を探ろうとしていると受け止められる。これまでのところ、粘り、つや、香りは劣るものの、丼ものやチャーハンに使えばわからないだろうという声がほとんどだ。
いずれにしても、一連の動きは国内産米の高止まりが大きな誘因となっている。4月2日現在、新潟コシヒカリ一般の主食うるち米相対価格は1万8,500円。高級小売店では米の価格が震災前より高くなったとはいえ、キロ50~80円アップがせいぜいで、長くは続かないだろう。米相対価格を真に受け、高値を期待するあまり在庫を抱え込んだり、生産者の論理だけを押し通して顧客からの信頼を失ったりしなければよいが……。
農業経営者のなかには、販売力をつけて他の生産者からの仕入れ販売を増やし、ブランドを確立しようとする動きや、もう一度足元を見直して個人の顧客との関係を新たな方法で強化する動きもある。「相対価格も高くなっているから」「食べてもらえばわかる」なんてユルイことを言っている場合ではない。将来に向けて競争力を維持するために、ターゲットの設定、品質、用途、コスト削減、顧客管理を再構築するには、多少なりとも米価や所得に余裕があるここ1~2年が最後のチャンスなのだ。
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松田恭子 マツダキョウコ
(株)結アソシエイト
代表取締役
日本能率協会総合研究所で公共系地域計画コンサルタントとして10年間勤務後、東京農業大学国際食糧情報学科助手を経て農業コンサルタントとして独立。実需者と生産者の連携の仕組みづくりや産地ブランド戦略を支援している。日本政策金融公庫農業経営上級アドバイザー試験合格者。(株)結アソシエイト代表取締役。
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