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ただし、収量と関係があるといってもジャガイモのように株間のバラツキなどの影響も強く受けます。単純に土壌硬度分布だけで判断することはできませんが、土壌硬度分布の影響が非常に大きいことは分かっています。さらに付け加えれば、個々の土質において最適な土壌硬度を実現しておけば、土質についての違いは決定的なものではありません。
収量を定量的に数値で推定・把握すること
定性的、定量的という言葉があります。定性的というのは、「地力が高いと収量が高い」という状態を表します。一方、定量的に表現すると、「土壌硬度分布が▲▲という状態であると収量が●●kg増える」というように具体的な数字が示されます。ここまでに説明してきた重要な因子を一つの式にすると、収量を定量的に推定し、把握できます。具体的に数値で示されることはとりわけ革新的です。
土壌硬度分布が同じ条件(同一ほ場内など)で株間を変えると、どの程度収量が変わるのかもいわゆるシミュレーションによって推定できます。あるいは、株間は同じでも土壌の物理性が変わるとどうなるのかも、計算することができます。もちろん、作物の養分状態が変わるとどう変化するのかも同様です。
現在、このシミュレーションは、多くの作物へ適用可能であることを確認しています。実用化に向けては土壌硬度分布、作物糖度、株間などの入力値の計測手法の標準化と精度の平準化などの未解決の問題があり、直ちに生産管理に利用できるという段階には至っていません。しかし、推定値から実際の試験結果を予測し、実用的な数値管理を実現することはそう難しいことはありません。
作物や何を知りたいかによって必要な因子は変わってきますが、その中で必須なのは土壌硬度分布です。農業において非常に重要なのは、土壌であるということは誰でも知っているにも関わらず、土壌条件と収量とが結びついていないためになかなかうまくゆきませんでした。数値管理を行なう上で、これは決定的な問題になります。
例えば、作物の養分(葉色なども含む)から、養分の多寡が分かったとしましょう。窒素が足りないから追肥すべき、と指導されます。追肥によって、収量が増えるとしても、どのくらいの収量が増えるかは分かりません。従来、行なわれてきた数値管理の限界は、ここです。
養分が足りないと分かっても、どのくらい追肥すると、どのくらいの収量になるのか推測できなければ、数値情報を当てにすることはできません。追肥コストを超えて、収穫量が増えるのであれば追肥した方が良いでしょうし、追肥コストよりも収量が増えないのが分かっていれば追肥する必要はありません。簡単にいえば、従来法では追肥をすべきかどうかを判断できなかったのです。
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岡本信一 オカモトシンイチ
(有)アグゼス
代表取締役社長
1961年生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業後、埼玉県、 北海道の農家にて農業研修。派米農業研修生として2年間アメ リカにて農業研修。種苗メーカー勤務後、1995年 農業コンサ ルタントとして独立。 1998年(有)アグセス設立代表取締役。農業 法人、農業関連メーカー、農産物流通企業、商社などの農業生 産のコンサルタントを国内外で行っている。講習会、研修会、現地 生産指導などは多数。無駄を省いたコスト削減を行ないつつ、効率の良い農業生産を目指している。 Blog:「あなたも農業コンサルタントになれる」 http://ameblo.jp/nougyoukonnsaru/
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