記事閲覧
【“被曝農業時代”を生きぬく】
「放射能汚染の土壌科学」シンポジウム、農水省マニュアルから自然凍土除染法、建設土木技術まで最新研究一挙採録
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第9回 2012年04月24日
- この記事をPDFで読む
2012年3月14日に、日本学術会議土壌科学分科会と日本農学アカデミーによるシンポジウム「放射能汚染の土壌科学―森・田・畑から家庭菜園まで―」が行われた。土壌の除染を調べた研究者の最新の知見の中から、農地の除染技術を紹介する。(取材・まとめ/サイエンスライター・佐藤成美)
農水省が除染マニュアルを発表
農林水産省は3月2日に、福島第一原発事故で放射性セシウムに汚染された農地の除染マニュアル「農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)作業の手引き」を公表した。マニュアルでは、効果が高いとされる「表土削り取り」や、「固化剤を使った削り取り」、「牧草地等での表土剥ぎ取り」、さらに「水による土壌攪拌・除去」、表層と下層の土を反転させる「反転耕」の五つの除染技術について解説。現場で除染作業をする人に、安全で効率的な作業の参考にしてもらうために、作業の手順や注意事項などを写真やイラストを使って紹介している。
シンポジウムでは、農業環境技術研究所理事長の宮下清貴氏が、「農水省の除染マニュアルとその考え方」と題する講演でこの除染マニュアルについて解説した。これまで、農地の放射性物質除去に関する法律やガイドラインは、農林水産省、環境省や厚生労働省から出されている(表1)。昨年9月14日に農林水産省が公表した「農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)について」は、農水省が行ってきた除染技術の実証実験成果をとりまとめ、土地の用途や放射性セシウム濃度に応じた農地土壌除染技術の考え方を整理したもの。「このマニュアルをもとに今まで限られた地域で行ってきた実証実験の地域を広げて大規模な実験を行う計画です。その実験からさらに詳細なマニュアルを作ろうとしています」と説明する。
外部被ばくをできる限り引き下げる
放射性物質除去に関しておおもとになる考え方は、原子力災害対策本部が昨年9月30日に公表した「農地の除染の適当な方法などの公表について」に示されている。
除染の基本目標は、「外部被ばくを可能な限り引き下げること」、「農業生産を再開できる条件の回復」及び「安全な農作物の提供すること」を掲げている。具体的には、推定年間被ばく線量20mSv以上の地域で、2年後にまで50%引き下げること、長期的には1mSv以下にまで引き下げること、土壌中の放射性セシウムの濃度も可能な限り低下させ、土壌から農作物への移行を低減させることが目標である。
会員の方はここからログイン
浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)