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【“被曝農業時代”を生きぬく】
「放射能汚染の土壌科学」シンポジウム、農水省マニュアルから自然凍土除染法、建設土木技術まで最新研究一挙採録
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第9回 2012年04月24日
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留意事項として、「作業における安全性を確保すること」はもちろんのこと、廃棄土壌の処理については、「仮置き場の確保の見通しをたてること」、除染処理後に農地の状態が悪化することも考えられるので「農業生産の再開にむけた地力の回復への対策の実施すること」、必要に応じて表土を削り取る前に除草し、「刈り取った雑草の仮置き場を確保すること」など、幅広くあげられている。「農地の状況をみながら、総合的に対処することが必要だとうたっています」と宮下氏は説明する。
放射性セシウムは、耕起していない農地の表面から2.5cmの厚さに95%が存在する。放射性セシウムは農地土壌中の粘土粒子と強く結合しており、容易に水に溶け出さない。ため池や用水などの水の汚染はわずかになっているという。また、粘土やシルトなど細かい土粒子に多く結合していることが確認されている。このように、放射性セシウムが表土付近に存在し、土に強くくっついていることが除染技術の前提となる。
具体的な作業手順と研究成果を記載
農林水産省の新しい除染マニュアルでは、作業手順をかなり具体的に説明している。使う作業機も具体的だ。たとえば、表土削り取りでは、バーチカルハローを用いて砕土した後、リアブレードにより砕いた土を削り取り、バックホーにより土を積み込み運搬するなどの手法だ。これは、農家の保有する農業機械を利用した方法であるが、建設作業用機械を使った場合の例もあげられている。
実証試験の成果も記載している。飯館村における実証実験では、表土削り取りでは、土壌1kgあたりの放射性セシウムの75%が低減したという。表面線量率も7.1Sv/hから3.4 Sv/hに減少した。10a程度の削り取りまでの作業時間は55~70分だった。「耕起していない農地であれば、線量や土地の用途に関わらす適用が可能ですが、廃棄する土の量が多いので、土壌の集積場所をあらかじめ決めておくことが必要です」と宮下氏はコメントした。表土削り取り実証試験の概要を表2に示す。
反転耕では、プラウにより30cm以上の反転耕起を行い、土の中の放射性物質を土の中深くに埋め込む。福島県本宮市で行った実証試験では、30cmの反転耕起で表層に局在した放射性物質は15~20cmの深さを中心に0~30cmの深さに拡散した。通常のプラウ耕では、地表面の空間線量率は0.66から0.40μSvに減少し、マニュアルに記載した方法では0.30μSvまで減少した。また45cmの反転で表土は20~45cmの土中に、60cmの反転で40~60cmの土中に移動した。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
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