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だから、この理論は間違いではないのだが、ビジネスの一局面だけで機能しても、すべてに当てはめられるものではないような気がする。
解決すべき問題を目の前にして議論する立場は悲観論、楽観論、そして現実論と概ね三つに分かれる。例えば、地震と原発事故を想定する場合、悲観論者は地震に留まらず、敵国からの攻撃、隕石の落下まで最悪の事態を想定する。楽観論者はそれぞれの事故の確率を検討し、且つ自分の利益を考慮して想定範囲を作り出す。そして、現実論者は歴史を遡って、考古学、地質学、そして地震学などの科学的手法を駆使したデータから問題を想定し、予知を導く。
三者の存在は互いに活かされるべきなので、どれが正解とは言えないが、想定とは悪ければ悪いほど深みにはまっていく。現在での我々の反省は想定外だったことで、それは薄い根拠を元にした楽観論者や、認識の甘さによる現実主義者の敗北と言えなくもない。そして、問題解決に目を向けない理論に想定はない。事に備えないのでは日和見主義にさえ映る。当然、筆者の認識が間違っていなければの話であって、ここはドラッカー批判が本旨ではないから、反論や異論には関わりたくない。ただ、万能の理論ではないと思う。
ここで述べたいのは、表題のように我々が今から考える方法である。解決すべき問題として、人間の作り出した経済問題以前に、物理的に深刻な地震や原発がある。どんな問題が想定され、どのように対処していくかということである。行政、コンサル、技術者、そして学者は過去の事実を見極め、すでに次の行動を起こしている。
今回の東日本大震災のレベルに近いとされる869年の貞観地震に関して言えば、歴史学者が古文書を見つけて判読・情報整理して、考古学者と地質学者が調査・分析し、地震学者がデータを元に地震現象を正確に見極めようとしている。今や文系と理系との枠を超えた連携が進む。井上ひさし氏の名言「過去を軽んじる者は、未来に軽んじられる」とは、この局面で思い出される。しかし、これだけではまだ不十分だ。人間と自然現象との関係を取り持つ研究分野、つまり防災学の創設が急がれる。
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マック木下
ゼネコン、商社、航空旅行業、世界的弱電企業などの国際畑で育ち過ぎた50代。1980年代から主に英国に住み、英人が本名をちゃんと発音できなかったので、いつしかマックに。ジャンルには無節操なライターで、執筆歴は10年間ほど。専門は日英関係史とロンドンの歴史散歩。寄稿先は『英国特集』『R.S.V.P.』『Quality Britain』『Taste of Britain』『未来教室』『ぼんじゅーるレマン』のほかミニコミや会員誌など。
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