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機械化された収穫
甘藷の作付けは、鳴門海峡にようやく春風が吹き始める3月初旬だ。暑い夏を越して9月初旬には収穫が始まりピークは同月末から10月初めにかけてやってくる。甘藷が終われば大根の作付けになる。12月には収穫が始まり、2月中には全部終えてしまう。それで甘藷の作付けというパターンだ。
甘藷で早い時期の収穫は、探り掘りという方法で行なう。砂地の畑に手を突っ込んで型の大きいのを手で探りながら掘り当てていく。収穫が本格的になると機械を使う。食器のフォークの親玉のようなものを、クローラをつけたトラクタの先端につけて畑を引いていく。クローブはトラクタが砂に埋め込むのを防ぐ。そのフォークで甘藷を根こそぎ取り上げる。最近は貯蔵施設も発達して年中出荷体制にある。
収穫機の導入で甘藷の収穫作業はグーンと能率アップした。甘藷の作付け農家は、25馬力クラスのトラクタを平均2台所有している。トラクタなど収穫期一式で230万円程度になるという。
それに比べ大根の収穫は機械化できても、重いのが農家に嫌われて作付けが年々減っているという。甘藷と大根の作付けパターンが次第に崩れつつある。大根は相場が乱高下するバクチ性の強い作物だけに農家はもう一つ気乗りしないようだ。しかも国内どこでも作れるから産地間の競合も激しい。
無駄を排除
里浦農協は、「鳴門金時」だけが有名ではない。その農協経営のユニークさもよく知られている。贅肉のない筋肉質の経営を心がけてきた。正組合員280戸と準組合貝100戸で、職員は19人しかいない。組合長に職員の配置状況を尋ねると、
「総務に2人、信用と販売に5・5人ずつ、購買に6人」という返事が戻ってきた。信用部門に配置されている5・5人も、忙しい時は他部門に助っ人に出されるということだ。
この人員体制で貯金100億円を集め、年間8億円弱の購買取り扱い、販売は甘藷と大根のほぼ2つの作物で40億円に達する。百井八重次組合長によれば、貯金量、共済の取り扱い、経済事業の取扱量、いずれも県下平均の3倍ぐらいの数字になり、もちろん系統利用率は限りなく100%に近い。
農業資材を扱う県内の商人系業者は、里浦農協には絶対に近づけないらしい。農協が扱う肥料や農薬などの農業資材価格が県下一安く、しかも甘藷や大根も高く売ってくれるからだ。100%近い系統利用率のカギはここにある。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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