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編集長インタビュー

ビジョンを明確に持ち、世界中で種を蒔きつづける



欧米と日本の違いは規模とビジネス感覚

――インドの次がイタリアですね。どうしてイタリアだったのですか。

時田 きっかけは人でした。夜中に仕事上の知り合いのイタリア人から、なにかチャレンジしたいというメールが来たんです。彼は同い年で、夢を語り合うような間柄でした。イタリアとは長年種を取る生産地としてずっと付き合いがあったのですが、そのメールがきっかけで、イタリアを起点としてヨーロッパをカバーできれば面白いなと思ったんです。日本人はイタリア好きですしね。
 その知り合いにうちの仕事を手伝ってもらうことにしたのですが、「ヘッドハンティングされた」といわれるのはいやだから、あちらの社長のところへ行って仁義を切って挨拶してきました。こういう日本流のやり方は、じつはイタリア人もけっこう好きなんです。向こうは種を取る、うちは種を開発する仕事なので、もともと競合はしません。逆に互いに仕事が増えました。


――イタリア野菜のラインナップを揃え始めたのは、それからですか。

時田 初めはトマトベリーをはじめ、うちの野菜をヨーロッパに売り込むのに必死でした。でも向こうが疲れてきたのか、半ば切れて「イタリア野菜を日本で売ってみればいいのに」といったんです。それを聞いて「いいね、それ」と思いました。考えてみれば、イタリアで野菜食べておいしくなかったことがないし、イタリアは野菜の消費量がものすごく多いんです。トマト以外にも、いろんな種類のしかも独特な野菜をふだんから食べている。でも日本にはほとんど知られていません。これは面白いと思って、種をかき集めて日本で植えてみました。案の定、うまくいかず、「社長、これじゃだめですよ」と社員からいわれたのですが、私は「いや、だめだからチャンスがあるんだ」といってこつこつ続けました。それが品種改良です。時間はかかりますが、現在、プロの農家がうちの品種を採用してくれています。

――欧米と日本と農家を比べた場合、どういう違いを感じますか。

時田 やはり規模ですね。日本では一軒の農家が採用しても、その量にはかぎりがあって東京のレストラン全部はとてもカバーできません。欧米はちがいます。以前、米国の展示会でトマトベリーをプレゼンしたことがあります。そこに若い人が来て試食して気に入ってくれて、ぜひやりたいからといって日本に来たんです。その若い人が、実は全米で五本の指に入る大規模生産者でした。もっている温室の面積が数十ヘクタールで、メキシコにも農場がある。必要とされる種の量の桁が違います。

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