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編集長インタビュー

ビジョンを明確に持ち、世界中で種を蒔きつづける



優先すべきは社会的責任を果たすこと

――以前、種という遺伝資源について問題意識を持っておられると聞いたのですが。

時田 ええ、近年米国のモンサントのような化学薬品メーカーが品種の遺伝子を解析して、それを特許で抑えるということが起きているんです。たとえば品種改良されたトマトの遺伝子に権利を主張して、ほかの人が使おうとすると特許使用料を要求する。でも、これは私はおかしいと思う。品種改良といっても、元々は自然がつくったもので、人間がつくったソフトウェアとはちがいます。そこに権利を主張するのは、いわば後出しジャンケンみたいなもので、私にはおかしいとしか思えない。
 私たちがしているのはビジネスですが、同時に、自然の力を利用して良いものをつくり、みんなを豊かにしたいという社会的責任を感じてやっています。でも、遺伝子に権利を主張するという発想にはその社会的責任の部分が欠落している。完全な商業主義なんです。彼らにとって大事なのは株主であって、みなを幸せにという発想がない。ビジョンが私たちと正反対なんです。でも、私は彼らのやっていることは続かないと思っています。お金を目的にすると続きません。冷ややかに見ていますが、脅威には感じていません。


――株主重視になると、投資へのリターンをなるべく早くということになりますね。

時田 ええ、でも、それは種苗という業態には向いていないんです。品種開発には時間がかかります。種の開発には平均すると10年くらいかかります。でも、時間がかかるからやめようという発想はありません。「時間がかかりますよ、社長」とスタッフにいわれると、「いいじゃないの」という(笑)。私たちは自然といっしょに商売しています。いくら技術が進んでも植物が必要としているものは変わっていません。キャベツが一週間でできるかというと、それは無理なので、おのずと一年間でできることは限られます。その中でいろんな工夫をしているわけです。それに、ときには損をしても社会的責任を果たさなくてはならないこともある。生産に失敗して種が不足したからといって値段を上げるわけにはいきません。
 でも、株主第一だとそういう言い訳が通用しない。だから、社会的責任ということに理解のある株主の元でやるとか、同族あるいは完全にプライベートでやるのが向いている。ただ、そういう考えを持つ会社は少なくなりましたね。

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