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特集

チャレンジ!コメ輸出 探そうあなたのお客さんは世界中にいる【前編】


 日本のコメは安全で、美味しいと、中国でも評判である。中国は高級米への需要がある。実際、中国が輸入しているのは、安いコメではなく、高価格の高級ジャスミン米(タイ産)である。日本米は、価格ではなく、品質で輸出競争力があるのではないか。

 中国のコメ需要量は1億5000万トン(玄米)もあるから、その1%を日本から輸入しても150万tになる(日本とケタが違う)。放射能汚染の風評被害を早く克服して、中国へのコメ輸出を実現したほうがよい。

 中国はコメの特恵関税輸入枠が532万t分ある(インディカ系266万t、ジャポニカ系266万t)。つまり、日本は関税ゼロ(正しくは1%)で輸出できる。日本の米生産量は700~800万t程度であるから、中国向け輸出が本格化すると、“減反”から“増反”に変わっていくのではないか(注・中国向けコメ輸出の可能性については、詳しくは拙稿「コメ輸出100万トン時代の到来か」『現代の理論』2011年春号第2節および第3節参照)。

 東アジアの経済発展は目覚ましい。所得上昇、富裕層の誕生で、日本の高級・高価な農産物を買えるようになってきた。日本はアジアの食糧基地になるのではないか。中国向けにコメ輸出が成功すれば、日本の農業・農村は急速に、かつ劇的に変化していくであろう。そして、日本の社会全体が大きく変化していこう。

 もちろん、市場開放すれば、コメ輸入は増えるであろう(米国カリフォルニア米や中国米は価格競争力がある)。現状のコメ輸入は70万tであるが、もっと増えるかもしれない。しかし、100万t輸出できるようになれば、その方が得策だ(安い価格で輸入し、高い価格の日本米を輸出する)。日本も、輸入もあるが輸出もある「普通の国」になるのである。

 いま、農業で一番必要なことは、期待利潤率を高めるビジョンを示すことだ。輸出産業化によって、成長産業、儲かる産業というイメージが出れば、産業の期待利潤率が高まり、俊敏な若者の新規参入も増えるであろう。規模拡大などは後でついてくる。儲かるならば、借地していくらでも規模拡大できる。遊休地も減る。

 産業内貿易が発生したほうが日本の農村の活性化につながるのではないか。農業の輸出産業化こそ最も効果的な農業改革の道となろう。


■日本経済大学大学院教授 経済評論家 叶 芳和(かのう・よしかず)
1943年鹿児島県奄美大島生まれ。77年一橋大学大学院博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長および会長を務める。82年に発表した『農業・先進国型産業論』に代表される一連の著作で未来の日本農業を予言した。中国問題にも造詣が深い。

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