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岡本信一の科学する農業

最大の問題点は基肥中心の施肥過剰



 施肥が多すぎると、病気生理障害が多くなり、天候の影響を増幅し、天気次第の栽培になるなど、いいことはありません。日本では施肥で作物を育てているという意識が強いために、施肥量を減らすことに、非常に多くの方が抵抗を持っています。


実際に基肥の窒素成分を半分にしてみたら……

 そこで今回は、基肥を減らすことでどのような効果があり、どのように改善が可能かを見てみましょう。

 ソラマメの全国的な産地である鹿児島県指宿市の(株)アグリスタイルにて、2008年から2年間調査させていただいたものを紹介します。初年度(以降、08年)はデータの採取のみを行ない、2年目(以降、09年)はデータの分析結果を元に基肥窒素を半分に削減しました。

 ソラマメは、節に一つずつ豆がなるために、さやの数を増やすようなことは基本的にできません。いかに不良ができないように取るのかが、収量を増やすポイントです。さやに入っている豆の数が少なすぎてもダメですし、曲がっていたり痛みがあったりすると出荷ができません。

 調査の方法は、6カ所の圃場でそれぞれ3カ所、合計18カ所に調査区画を設けて、作物体と土壌の養分データ、収量を調査しました。作物体と土壌分析は、約10日ごとに行ない、収穫は、数日おきに普通に収穫してもらったものです。

 まず見てもらいたいのは、調査を行なった2年間の気象データ(図1)です。平年値と比べると08年は、やや干ばつ気味で、09年は、日照も少なく、雨量が相当多いという正反対の天候でした。ところが、調査結果では、はるかに09年の収穫量の方が多かったのです。08年に調査を行なった時点で窒素が多いと考えられたので、09年に全圃場の施肥量を半分にしてもらったことで、良い結果が得られたと考えられます。

 同社社長の湯ノ口貴之氏は「言われた通り窒素を半分に減らしたら、不良率が下がりました。雨が多かったので周囲は不作でした。ご近所のベテラン農家は、『たまたま』とか『植えた時期がよかったのでは』とか言ってました……」と効果を語っています。不良率が下がった結果、出荷量が大幅に増えたのです。

 指宿のソラマメは、12月の初旬から収穫が始まり、翌春まで続きますが、調査時期の関係で、1月12日~3月18日の調査結果になります。なお、測定回数や間隔などが若干違うため、調査期間を4回に分けて集計しています。

 図2にソラマメのさやの数を示します。両年とも調査した総さや数はほとんど変わりません。ソラマメが節に一つになるため数自体は影響されません。しかし、出荷できるさやの数は、まるで違っていて09年の方がはるかに多く、出荷数による歩留まり割合は、ほぼ倍近くに増えていました。

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