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読み切り

「新食糧法」施行によせて
今こそ、農協に奮起を望む

2、農業者と農協はどう動くか


 二人は万民のために、万民は一人のために」ではなく、個人利益を追及することが公益に結び付くことに目覚めるべきである。食管法では、自主米を農業者が農協に販売の委託をし(仮渡し金とメリット精算)、農協は経済連に再委託をすることが義務付けられていた。新食糧法では、この義務がなくなる。農協は独自で販売ができ、相手は全国の消費者、米穀小売、卸、生協など無制限である。

 その中の選択肢の一つとして、経済連との取引かある。農協にとって有利な販売方法を選ぶことが、組合員農業者の米を高く売ることになる。農協はこれまで地元の消費者に小売りする米を経済連から買っていた。米に関して農協は汗を流して集荷するだけで、植民地のような有様だった。これからは営農指導を強化して、市場性の高い米を自らの責任で売る。そしてそれを翌年の営農指導に反映させる。これが農協の独立である。

 農業者が消費者との産直に走ったのは、消費者の支払う米代金と自らの売り渡し代金の落差が大きいことが動機になっている。流通の合理化が進み、流通コストが安くなる。玄米で農協に売ることが、組合員農業者にとって有利になる仕組みを新食糧法では作ることができる。それぞれの地域としての米戦略を含めた農業ビジョンを農協と一緒になって考える時なのである。


3、米価は高くなる


 農業の各種補助金には、消費者からみて分かりにくいものが多く、それが米の流通統制で不透明感が増幅されて「米」のイメージを暗くする。これも消費減退の大きな理由である。昨年3月の米騒動を思い出すまでもなく、消費者の国産米に対する願望は強いものがある。

 今、米作りの大半は、いつでも稲作から撤退できる人たちである。今の米価では、法人が地代を払い、雇用している社員に他産業並みに給料を支払うことはたいへんであろう(一部にはもっと安い米価でも充分という人もいるが、詳しい収支決算書で説明してほしい)。再生産が必要であるなら再生産するものに、それに見合う対価を支払わねばならない。今の米価はそれに見合っているのか、否か。見合っているのに農業者所得が低いなら、経営能力が足りないことであり、兼業農家の出血稲作が米価を押さえているなら近い将来、米価は上がる。

 新食糧法では、米取り引きが自由になる。特に農協の販売活動が市場に与えるインパクトが大きい。「どこの農協が、どの米穀業者に、いくらで売った」という情報が飛び交うことで、必然的に米相場が生まれ、伝達されることを反復することで『私設米市場』が形成される。整備された市場がないまま米取引か行なわれるとトラブルも予想されるが、この点については別の機会に述べることとする。

 こうして米市場がシステムとして形成されることを認めているのが新食糧法である。


4、新食糧法への対応が鈍い生産者サイド


 大きな可能性を秘めた新食糧法にもかかわらず、農協の新時代への熱気が感じられず、農業者も消費者直結思考から離れられないようである。農協が独自販売の『リスクと決断が結果を生み出す』ことに躊躇しているのであれば、それは貴任回避であり、農業者が単純に1円でも高い買い手を探すだけであれば、隣のオヤジと比べて喜ぶだけのことで終わる。

 新食糧法の下で農協と組合員農業者が一体となって、構造的な米価問題に取り組まなければ、再生産のできる、すなわち後継者の育つ農業は生まれない。

 生産調整で米価を維持するような消極策では明日の農業は見えてこない。

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