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イベントレポート

『農業経営者』読者の会 定例セミナー 誌上採録 中国で「いちご」をつくる/有限会社 ストロベリーフィールズ 代表取締役 遠藤健二氏 



ターゲットを絞ってマーケティングを明確にする

 また中国での販売に関しては、「日本のようにスーパーに出して中間層に売っていくような多数派を狙う発想では難しい。安い作物を作るのか高い作物を作るのかをはっきり決め、どの層に向けてどこに売るか、ターゲットを絞る必要がある」と案じた。

 というのも中国の食品は露地販売のような店先で売ってる市場が大きく、遠藤氏が見るかぎり、日本的な正規の流通に乗っているのは2割ほど。そして前者と後者では、野菜の価格差が10倍、場合によっては20倍の開きがある。

 「売りやすいからといって、露地の市場に出してしまえば単価が全く見合わなくなる。そうなると中国まで行って作る意味を見失ってしまうだろう。一方、伊勢丹のようなデパート、カルフールといった大手の外資系、高級スーパー、コンビニエンスなどは品揃えが充実しており、品質も値段も高い。約2割と比率は少なくても、我々は正規の流通を重視すべきだ」


本物が出て行って闘う余地は確実にある

 そしてこうした高級店は、イチゴの売り方において、パッケージ、形、量など、かなり自由が効く。しかし必ずしもいいことばかりではなく、成都の伊勢丹では「いちご園」と日本語の看板を出した業者が出店しており、「和美人」というイチゴを販売しているが、これは日本の品種ではなくカリフォルニア系のガチガチのかたい品種。しかも日本的な雰囲気を出すだけで、結構な値段で売れてしまう現状があるのだ。遠藤氏はこの事実を「類似品が山のように出回っている」と警戒しながら、同時に「日本の作物に対する高い期待感の表れ」とも解釈した。

 「安徽省に長豊県という中国でもっとも大きなイチゴの産地があり、イチゴの圃場だけで約1400ha、栃木県と福岡県をあわせた量に匹敵する50万tを生産している。現地の生産者に話を聞いたら「いくら作っても足りない」とのことで、高級品に対する需要が拡大している現実を確信した。中国で展開していくためには流通の整備と生産条件をしっかり調整して、考え方を向こうに合わせていく必要はある。しかしそれさえクリアできれば、本物が出て行って闘う余地は確実にある」


なぜ中国で農業をやるのか

 中国進出をもくろむ生産者には必ず「なぜ中国で農業をやるのか?」という質問が向けられる。これに対して、遠藤氏は「必要とされる場所で仕事をするということ」と明快に捉えている。

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