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新・農業経営者ルポ

グローバル化で生き残る農業


もちろん、野菜づくりを楽しんでいるだけではない。経営に対する確固たる信念を持っている。

「うちのハウスには他のハウスには必ずあるものがない。何だかわかりますか」――。質問する側の私が逆に質問された。辛うじて「暖房機がないですね…」と答えた。すかさず今度は私が「でも加温をしない分、生育が遅れ、出荷時期を逃すのでは?」と聞くと、長島は「ふふふ…」。

「コスト面だけみても無加温のほうがいい。でもそれだけじゃない。誰もかれも加温するから、促成や抑制が珍しくも何ともなくなり、結果は価格を下げてしまった。私はそういうことはしない。このハウスは露地よりも少し早く出す。加温ハウスよりは遅く出すという位置づけです。このすき間がもうかりますから。私の基本は、環境に負荷を与えない農業、そして旬のものを旬の時に出すというやり方です」

今年の春に植えた玉ネギがとう立ちして、玉が大きくならなかった。「でも葉の部分はおいしいので、今シーズン初のタマネギという意味で“タマネギヌーヴォー”としてレストランに出荷したら好評でした。大事にしているのは商品化率をあげること。畑に植えた野菜の90%は商品になっています。おかげで利益率はいいですよ」――。

何を聞いてもよどみなく答える。それだけ頭の中で整理されている証拠だ。


少ない農業者が農業を支えるドイツ

ドイツの話に戻ろう。突然の廃業宣言によって、その農場での研修は10ヶ月で終了となった。だが、ドイツに行かなければ経験できないことがあった。マイスター制度にふれたこともひとつだ。

ドイツでは一定の職務経験や専門の教育を修めた人に「マイスター」の称号が国家から与えられる。マイスターになるための専門の大学もある。しかし学校の授業だけではなく職業の現場と常に連携し、現場の問題を吸い上げ、大学で解決策を探り、再び現場に還元するという連携がしっかりと組まれているそうだ。

農業の場合、農場主自らがマイスターの資格を持つ場合もあれば、マイスターを雇う場合もある。長島が研修を受けた農場は後者だった。マイスターを雇う農場には税制面や研修生の受け入れ時に優遇されるなどメリットがある。

私は、マイスターとは秀でた職人技を持つ人に与えられる資格だと思っていたが、長島から「後継者育成こそマイスターの使命」だと教わった。長島もマイスターから農産物をどうやって売ればいいか、スタッフがやりがいを感じながら働いてもらうにはどういう組織を作ればいいのかなど指導を受けた。

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