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【海外レポート】
Agritec2012&イスラエル農業訪問記 第1回 イスラエルでデータ農業の原点を見直す
- (有)大崎農園 専務取締役 中山清隆
- 2012年06月15日
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イスラエル訪問の狙い
本誌のイスラエル農業視察ツアーに参加してきた。
私が共同経営する大崎農園の生産工程管理を見直す機会になればというのが視察の狙いだ。
当農園は大学時代の同級生3人が立ち上げた農場である。みな非農家出身で、まったくゼロからのスタートで農業の世界に飛び込んだこともあり、「わからないことをなくそう(わかれば改善できる)」というポリシーで栽培に取り組んでいる。
この考えのもと、徹底した土壌分析、土質分析、季節別蒸散量の変化、生育日数などなどのデータを日々蓄積、分析してきた。こうした知識を従業員に伝えるため、土壌水分や栽培作業の数値管理マニュアルも整備済みである。農業も「データ分析によって経験値が短縮できる」ことを身をもって実践してきたといえる。
しかし近年、露地栽培の規模を急拡大する中、当農園の管理手法をもっと改善できるのではとの問題意識があった。
そこで今回、視察を通じてイスラエル農業の片鱗を見て、いかに効率(水・光・養分などすべての要素)を上げることが重要かを学んできた次第である。
降水量40mmでの栽培技術
特にイスラエル南部の農業は目を見張るものがあった。緯度は屋久島あたりに位置しているが、年間降水量は40mm程度と極端に少ない。降水量より蒸散量のほうが多い砂漠地帯においては、pH7.2から8.0と強度の塩基性土壌であり、農産物生産には非常に厳しい地域である。
このような土地で通常の灌水を行っても、水は表面張力で表層を流れてしまう。しみ込んだとしても一気に塩基が溶け出す。そして、乾燥に伴い表層の塩分集積と高pH化が進み、作物の根は濃度障害を起こしかねない。そこで登場するのがイスラエル生まれの技術「点滴灌水」で、最大限効力を発揮していた。
私のみたところでは、点滴灌水でゆっくりと土を湿らせ根域を確保した上で、必要最低限の養分を元肥なしで供給する。トマト栽培などでは根域を確保するまでは塩類濃度の低いボーリーング水で灌水を行ない、その後生育過程に応じて、濃度を調整してストレスを与えるような栽培手法である。現地農場で試食したミニトマトはストレス栽培によって、糖度と酸度のバランスがとてもよいものができていた。
驚愕の20tどりのミニトマト
そのおいしさで、「収量は10a当たり20t」と説明があると、参加者一同驚きを隠せない様子だった。現地の気温は30度を超え、栽培後期の日本なら成り疲れがみられる頃だが、樹勢も衰えをみせていなかった。
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中山清隆
(有)大崎農園
専務取締役
プロフィール:(有)大崎農園専務取締役1971年神奈川県横浜市生まれ。東海大学海洋学部卒業。脱サラ後、鹿児島県大崎町に同級生3人で就農。ゼロからはじめて13年で、約3億円を売り上げる鹿児島県を代表する野菜生産法人に成長した。栽培品目は小ネギ、ダイコン、キャベツが中心。
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