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イベントレポート

徹底討論 ニッポンの農産物輸出 世界で戦える戦略を描けるか(N-1 サミット2012)

2050年、日本の人口は2000万人減の1億人になる一方、世界人口は25億人も増えると予測されている。輸出こそ日本農業が攻めに転じる切り札と呼ばれる所以である。それ以上に、輸出の成否は日本農業にとって死活問題といっていいだろう。現在、世界51位(同)と欧米先進国から大きく引き離された日本の輸出ランキングをどうやって逆転していくか。その課題と可能性を議論した「N-1サミット2012」のパネルディスカッションの模様を採録する。世界と戦えるあらたな戦略がここにある。

高島:みなさんこんにちは。本日は「今、世界で戦うタイミングである日本農業は、一体どんな戦略を描けるか」をテーマにディスカッションをしたいと思います。
 というのも、これからの40年間で日本の人口は約20%減り、一方で世界の人口は約35%増えていきます。内需が減少していくことは明らかであり、本日のパネリスト浅川さんの言葉を借りれば、「国内に市場を限定して、継続的に発展した業界は歴史的に皆無。だから『海外展開をやるかやらないか』というのは死活問題」に他なりません。海外に打って出るということでは最近、TPPも議論の対象になっていますが、反対派肯定派ともども、具体的にどうするかといえば、戦略があまり整ってない状況なのではないでしょうか。われわれ業界当事者はそこを整理していく必要があります。
 それではまず遠藤さん。すでに輸出されている生産者の立場から、なぜ海外展開をされているか、お話を聞かせてください。


遠藤:結構単純な話なんです。私は地元で作って地元で消費する農業の地産地消はすごくいいことだと思っています。しかし全量を扱うことは不可能なので、その先はどこへ売るかという問題になってくる。その場合、自分の農産物をもっとも評価してくれる場所を探したら、それが海外だったということです。
 個人的にアジアを中心とした外国旅行が好きなのですが、海外にいると日本の農産物に対する評価の高さに驚くことが少なくありません。これは逆から言えば、日本の農産物がもっとも評価されてない場所は実は日本だということ。そうなると「こんな土地で農業をやり続けていいのか」「はたしてわれわれは生き残れるのか」という疑問も生まれてきて、結果、高く評価してくれるところに出ていくしかないのではないか、と考えるようになったわけです。


高島:ちなみに現在、どんな海外展開をされているのでしょうか。

遠藤:3・11以前は外国へサンプルを送り、商談がまとめる寸前まで話が進んでいたのですが、3・11以降、当面の間、輸出が難しくなってしまいました。ということで今は農産物ではなく、農業技術自体を輸出しようと画策している最中です。

高島:遠藤さんのように「いちばん評価されるところで勝負したい」という発想が生まれるのは非常に自然なことだと思いますが、浅川さん、マクロ的に見て海外に行く理由とは何でしょうか。

浅川:現在、世界的な農産物の生産額は毎年10兆円ずつ増えています。日本の農業生産額が8兆円を少し上回るぐらいなので、日本の農家から出荷している金額以上の額が毎年増えていることになる。国内の市場が縮小する中、拡大市場に挑まない理由はありません。
 そして農産物の輸出額を国別に見ると、1位米国、2位オランダ、3位ドイツで、ドイツは過去40年間で輸出額を50倍に増やしています。一方、日本はほとんど増えてない。そう聞くとドイツをすごいと思うかもしれませんが、日本の農業生産額はドイツの3倍弱、オランダの5倍もあるんです。内需だけでこれだけの市場スケールがあるということは、日本農業はこれまでたいへん恵まれたポジションにあるということ。つまりどんな成長戦略を組むかによって、伸びしろはいくらでもあるわけです。そんな歴史的スタートラインに立っていることを、この会場にいらっしゃるみなさんに認識していただければと思います。

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