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江刺の稲

農業問題とは農業関係者問題である

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第194回 2012年06月15日

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人事院の報告によれば、平成22年1月15日現在の農林水産省(林野庁、水産庁を含む)の職員数は2万5041人。農林水産省管轄の独立行政法人のホームページからその職員数を調べてみると、13法人の合計は常勤職員だけで7907人である。また、総務省の資料をめくってみると、平成23年度の農林水産関係の地方公務員数は3万6899人である。文部省関係の農林水産分野を専門とする平成23年の大学教員数は3637人。さらに、データは古いが、平成22年の農業白書で紹介されている平成20年の農業関連団体の市町村段階から全国組織までの職員数の合計は、農協系統組織が25万4857人、農業委員会3万7881人、農業共済団体7889人、土地改良団体1万1037人である。合計すると38万5148人。
この人数の中には林業や水産分野の職員も含まれるわけだが、これらの人々を我が国の農林水産分野を支援する目的で仕事をする「農業関係者」と呼んでも良いだろう。

これに対して、平成24年6月1日現在の総農家数は253万戸。うち、「経営耕地面積が30a以上又は農産物販売金額が年間50万円以上」の販売農家が156万戸。さらに、「農業所得が主で1年間に自営農業に60日以上従事している65歳未満の世帯員がいる」主業農家は36万戸である。販売農家の中には販売金額がゼロの農家が約1割もおり、6割程度は販売額(売上)が100万円に満たない。現実的には販売農家という分類にあてはまる農家といえども産業としての農業に従事する農家とは言えない。せめて、主業農家という分類が、農業を仕事として選択した人々といえる。

そうすると、36万戸の主業農家の数を上回る38万5148人の農業関係者がいるということだ。総農家数253万戸と対比させても農家戸数6.7戸に一人、販売農家では4戸に一人の農業関係者がいる勘定だ。

もちろん、農業・農村の持つ機能は産業としての農業だけではない。とは言え、他の先進国と比べて農家戸数比あるいは人口比としても農業関係者の数は異常に多いのではないだろうか。

その例として、農学部、農学科あるいは農林水産業にかかわる学科をもつ国公私立の大学は約60ある。これに対して九州程度の面積しかないが、農産物輸出額が世界で2位のオランダには農学部を持つ大学はワーゲニンゲン大学一つ。他のEU諸国でも多くても5カ所位だ。さらに、世界一の農業大国である米国。その中でも米国一の農業生産額を誇るカリフォルニア州で農学部があるのはカリフォルニア州立大学だけであり、その3つの分校(バークレイ、デービス、ロサンジェルス)に農学部があるだけだ。

東京帝国大学の農学部教授(農業経済学)を経て東京農業大学初代学長の横井時敬の「農学栄えて農業滅ぶ」という言葉が有名であるが、それはまさに現代の我が国の農業界の姿である。さらに筆者は、「農業問題とは農業関係者問題」であり、「農業関係者が自らの居場所作りのために農業問題を創作している」と思っている。

農家数、農家比率の減少とはその国の産業の経済発展段階を示す一つの指標ということも可能なのであり、その意味で言えば我が国の農家数も農業関係者の数も、先進国の中では異常な様相を呈している。それが戦後の我が国の産業発展や経済成長、それを背景とした政治的に保護された特殊な農業界なのだ。

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