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岡本信一の科学する農業

施肥窒素量を最適化すれば、天候の影響は軽減できる

前回、天候が悪かったにも関わらず、基肥の窒素量を半分にしただけで出荷量が増え、歩留まりが大幅に改善したソラマメの事例(鹿児島県・(株)アグリスタイル)を紹介しました。なぜこの結果が得られたのかを引き続き、作物体の養分データを見ながら説明してみます。

作物体中の糖度を測れば収量が予測できる!?

 現在、作物体の養分データで最も重視しているのは、糖度(Brix)です。作物体中の糖度が何を意味しているのかというと、光合成による糖の生成量を表していると考えられます。平たく説明すると、光合成とは、二酸化炭素と水、光のエネルギーから、糖(炭水化物)を得る代謝で、糖を作る働きのことです。

 天気が悪く光の量が少なかったり、水の過不足などによって光合成が活発に行なわれないと、作られる糖の量が減ります。多くの収穫物は、糖を中心とした炭水化物が主成分なので、同時に収量も減ってしまいます。よって、作物体中の糖度を測定すると、光合成が活発に行なわれたかどうかが大まかに分かるのです。

 一般的には、天気やその他の条件が悪ければ、作物体中の糖度が低くなる傾向があります。逆に、糖度が低ければ、施肥が適切でない、土壌の状態が悪く根の張りが悪い、天気が悪いといった理由で光合成が活発でなかったことを表します。

 まず、糖度の推移(図1)を見てみましょう。日照が少なく雨量が相当多かった2009年は安定して高く、比較的天候が穏やかだった08年の方が、変化が大きいことが分かります。糖度の変化の大きさは、天候の影響を大きく受けていることを意味しますが、収量との関係を見るともっとはっきりします。

 表1は糖度と収量の相関係数です。正の相関の場合は「糖度が高ければ収量が多い」という関係を、負の相関であると「糖度が高いと収量が低い」という関係を表しています。それぞれ1または、マイナス1が最大で、0に近ければ近いほど両者に関係がないことを示します。今回は収穫1回目と同時に測った糖度とその後の収量との関係を調べました。

 結果は明白で、2回目の収量と3回目の収量に、糖度データと強い正の相関関係が見られます。糖度が高いとその後の収量は高くなり、規格外の収量は減ります。1回目の収量はそれ以前の糖度と関係があるので、収穫時期の影響は受けません。

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