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“被曝農業時代”を生きぬく

酒からは放射性物質を除去できる 後世に3・11を伝える酒造りで農業生産の復活を!



 その後ドイツやフランスのワインたちも、セシウムの残留数値は370Bq/kg(チェルノブイリ原発事故後に日本が採用した輸入食品中のセシウム134及びセシウム137の濃度の暫定限度)を大きく下回るものばかりであった。

 さらに、私を驚かせたことがあった。その後数年のうちに、どこのワインも価格の高低を問わず、今までとは比較にならないほどきれいな香味のワインに変身していったのである。

 いったいワインに何が起こったと思われるだろうか?


ベントナイトろ過でワインの品質が向上した

 ベントナイトというものがある。土壌に詳しい農業経営者のみなさんには釈迦に説法に違いないが、これは粘土鉱物の一種で、食品加工の分野では油脂や飲料のろ過助剤として利用の歴史の長いものだ。もちろんワインにも使われている。

 チェルノブイリ原発事故から1年後だったと記憶するが、そのベントナイトに放射性物質を吸着する機能が確認され、これを用いれば1986年産以降のワインを含む大半の酒類の安全性は確保されるとの情報がもたらされたのである。

 ちなみに、福島第一発電所でフランス・アレバ社が行っている汚染水処理にも、もちろんベントナイトが用いられている。

 これは朗報には違いなかったが、私は少々憂鬱になった。というのは、安価なワインに対してベントナイトで清澄ろ過を行うということは以前から行われていたのだが、このプロセスを経たワインは、わずかだが独特の匂いがワインに付着してしまうのだ。だから私は「高級ワインに安ワインと同じ粘土臭が付いてしまう」と心配したのである。

 だが、現実は違ったようだ。その後入手したワインは前段で述べたように香味がよいものが多く、粘土臭を感じることはなかった。

 ベントナイトの加工・利用技術が進んだのだ。その背景は容易に想像できる。ベントナイトが放射性物質の吸着に有効とわかると同時に、ベントナイトの需要は一気に高まった。この先は私の推測が入る話だが、このベントナイトの新たな需要者の大半は、今までベントナイトには見向きもしなかった高級ワイン生産者であったはずだ。ワインの出荷を可能にする技術には、金に糸目は付けなかっただろう。かくして、ベントナイトを扱う企業は、この“特需”によってベントナイト精製技術を飛躍的に向上させ、粘土臭を残さないベントナイト製ろ過助剤を開発できたのだ。

 この経験を経たヨーロッパは、放射性物質の汚染を受けた地域でも安全な酒を製造できることを理解している。参考に、今年3月のEC(欧州委員会)のSCFCAH(フードチェーン及び動物衛生常任委員会)議事録に、以下の内容があることを確認いただきたい。

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